「わたし、ジェームズのことが好きだったよ。面と向かって言えなかったことを後悔してた。だから今更、ごめんね」

さっき懐かしい思い出と言ったけど、私の頬はあの頃を思い出して濡れていた。案外ロマンチストだったのかな。なんて思いながら涙を拭う。

「2人は幸せだった?」

短い結婚生活で、例のあの人から逃げて隠れてそれでも最期の時まで幸せだったんだろうか。
でも、当たり前だけど目の前の冷たい石が返事をよこすことはない。気持ちの吐露に区切りをつけて花束を墓に供え、立ち上がる。
そうして後ろを向いた瞬間、暖かな風が背中を押した気がした。

なんてことない、ただの風だったのかもしれない。けれど、私には2人からの返事のような気がしたんだ。

「あたりまえだろうってことかな」

ふ、と緩む口元をひきしめて姿くらましをした。仕事は待ってはくれないのだ。

どうかふたりが幸せでありますように。


fin.
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