別れ



気づけば両手で彼の頬を包み、口をふさいでいた。突発的な行動のせいで魔法で浮かせていた大事な水槽は地面に落っこちて。ガシャン、と背後で派手な音がした。

「勝手に振らないでください。私は嫌って言われたってあなたへ会いに行きますから」

いつからなのか、病室のときだろうか。彼は私の気持ちに薄々気づいていたのだ。
まさかキスをされると思ってはいなかったのかリーマスの病気のような青ざめた顔がすこし赤い。ちょっと優越感がないこともない。
後で水槽は弁償します。とつぶやいてまた唇を重ねる。二度目のキスは、戸惑いながらも降参したのか、離れたあとは少し名残惜しそうだったと思う。

「僕はなかなか厄介なひとを好きになったようだね」

そう言って笑って、なだめるように私を抱きしめて。彼は馬車に乗って去っていった。

きっと諦めの悪い彼は少し時間をおいたらまた拒絶しそうだから部屋にもどったらすぐにでも手紙を書かなくては。濡れた頬を拭って学校へ戻る。

後日あのキスが生徒に見られていて噂になってしまい、ミネルバからこっぴどく怒られてしまうのは、また別の話だ。
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