馬車までの短い時間で、ポッターが守護霊を無事出せたこと、それが牡鹿だったこと。彼の父親と同じだったこと。教師として鼻が高いことをリーマスは嬉しそうに教えてくれた。
そんな彼の話に相槌を打っていて、ふと、このまま別れたら彼はもう二度と私と会ってくれないような気がして、目の前の景色が滲んできた。泣くまいと思って、顔も見られたくないので途中からは前を歩きながら必死に上を向いていたら、ローブをかすかに引っ張られる。
「ずっと迷っていたんだ。僕はみずぼらしいし、そもそも人狼だし。今やこの歳にして職なしだ。」
先程までと打って変わってすごく弱々しい声だった。振り返るとリーマスは下を向いていて表情を伺うことができない。私のローブを掴む手は少し震えている。
「だけど、こんなに好きになったのは、幸せになってほしいと思ったのは初めてだったから。だから」
僕のことは忘れてほしい。そう言われる気がして。そんな言葉は聞きたくなくて。
もくじへ