私とジェームズさんは付き合ったからといってキスも、それ以上も決してすることはなかった。
ハグや手を繋ぐことさえしたことがない。もしかしたら、付き合う前の先輩と後輩の間柄の時の方がスキンシップがあったかもしれない。

なんとなく、そういう雰囲気になる時だってある。ふたりで中庭のベンチにいる時、ふと、視線が絡み合う時があるのだ。私ばかりが話しかけていて、でもその話題も尽きて、ふと、ジェームズさんを見た時。彼も私を見ている。
すごく嬉しいことなのに、ジェームズさんは私を見ているけど実際には空想の中のエバンズさんを見ている気がしてしまう。

だって、ジェームズさんはエバンズさんのことが好きなのだから。
欲を持ったハシバミ色の瞳が私をじっとみつめる。顔がどんどん近づいてきてキスをしそうになったところで、私がいつもとん、と軽く彼の身体を押す。

守る


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