それから恐らく朝まで寝ていたんだろう。次に目を開けた時にはチュンチュン鳥の鳴く声がした。
「本当になんともないですか?」
「はい、大丈夫です。健康そのものです」
渋々といった様子でマダムが送り出してくれた。
まだ時間が早いのか生徒や先生はいない。シャワーでもあびるか。そう考えて談話室に戻ると人影があった。
「っ、ジェームズさん」
後ろからでも、遠くからでもわかる。真っ黒の髪の毛、好き勝手にはねた毛先。私より高くて、頼りになる背中。
会いたくて話したくてたまらなかったその人がソファに座っていた。だけど私の漏れた声にはピクリとも動かない。
恐る恐る近づき、顔を覗き込むと彼は眠っていた。
なんとなく、少し間をあけて隣に座る。よくみると座ったまま眠っているのでかくん、かくん、と頭が動く。浅い眠りだろうか、起こすのは躊躇われた。