なんとなくすぐに立ち去るのも気が引けたので拭いた後であろう椅子に腰掛ける。
ここで1ヶ月と少し前、目の前にいるシリウスさんから告白をされ、断った。そのあとにまたこうして同じ場所で会うことになるなんて不思議な気持ちだ。
魔法を使わずに掃除するようにいわれているのだろう、雑巾をしぼるシリウスさんの手先はみるからに冷たそうで、すこし赤くなっていた。じっと掃除する姿を見ているとやがてシリウスさんが口を開いた。

「…ジェームズは、ここじゃないとこで罰則受けてる」
「そうなんですね」

ジェームズという名前。聞くだけでまだ心がざわりとする。そんな気持ちを隠してあまり興味が無いように、そう見えるように努めて返事をする。
だが、彼にはお見通しのようで大きなため息をひとつ、吐かれた。そのあとがしがしと頭をかいて、少し間があった後こちらを向いた。もう手には雑巾などなく、掃除なんてしていなかった。

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