++恋文/ハルト


 暖かな春の日が続いています。君は元気にしていますか。誰かに宛てて手紙を書くことは久しぶりで、柄にも無く緊張しています。
 君と過ごした日々は楽しくて幸せで、ずっと続けばいいと思ってた。でもそれは叶うこと無く、その日々の記憶さえも明日明後日には無くなってしまうのだから。
 こんな話をしてしまってごめん。何かをしていなければ落ち着かなくて。本当は恐ろしくてたまらないんだ。きっと俺は、次君に会うときには君のことを忘れてしまうのだと思う。君の仕草も声もその姿だって、今瞼を閉じればすぐに思い浮かぶのに、次にはその全てを忘れてしまって、それにもしかしたらもう二度と君に会えることもないのかもしれない。それが苦しくて悲しくて、胸がぎゅっとしめつけられるんだ。
 たくさん俺に話しかけてくれてありがとう。君から聞く外の話はとても新鮮で楽しかったよ。時々くれる差し入れも嬉しかった。たまにぎょっとするような物を送ってくれて、君は俺のそんな姿を見透かしたようにメッセージを送ってきて、それで君のいたずらっ子のような笑みを想像したな。ガラスを介してだけれど手を重ね合わせたとき、不思議だけれど本当に暖かく感じたんだ。あの時の俺は、君の言葉やその行動にたくさん救われた。
 君には感謝してもしきれないくらい。本当は直接言いたいのだけど、それも駄目なんだろうな。
 初めての面会の時、君を試すようなことをしてごめん。随分と冷たく当たってしまってごめん。君を忘れてしまうこともごめん。最後に、君に好きだなんて無責任なことを言ってごめん。なんだか俺は君からたくさんのことを与えられたのに、仇で返すようなことばかりしているな。
 君が好きだ。君の笑顔を最初に見るのも、君の隣に居るのも、幸せを分かち合うのも、俺でありたかった。でもその可能性はとても低くて、君の隣には俺では無い人が居るかもしれないな。でも君が選んだ人なら、きっと君を幸せにしてくれるんだと思う。その隣に居るのは俺でありたかったけれど、君が幸せならそれでもいいんだ。
 長々とこんな手紙を書いてごめん。きっとこの手紙は君には届かないだろう。誰かに見られてしまうのも嫌だから、捨ててしまうことにするよ。








20161016


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