++駅、ホームにて



「硲さんと握野さんは京都、結構行かれるんですか?」
「私は教師をしていた時の修学旅行の引率ぶりだ。もともと実家からもそう遠くはないので、家族旅行で行くこともあった」
「俺は高校の時の修学旅行ぶりだな。アイドルになってから撮影で行くことはあっても、撮影場所とホテルの往復だったからな……」

 駅は人でごった返していた。3月上旬の平日と言うこともあり、春休みや引っ越しの時期ではないものの、やはり観光に適している時期なのだろう。新幹線を待つ列はサラリーマンと観光をしに行くような風体の人でほぼ半分半分だった。
 私は1泊2日分の荷物が入ったリュックサックの紐を寄せる。短期間の出張の際にいつもお世話になる相棒だ。両手が塞がらないのが良い。
 3月、東京は薄手のブラウスにジャケットを羽織れば十分な気温だが、桜庭さんには「京都は盆地だから夜は冷える」と半ば脅しのように言われたので、薄手のジャンパーを持ってきていた。3人も同じように体温調節ができるよう上着を持ってきていた。

「私も握野さんと同じですね。修学旅行ぶりです。仕事の時は観光の気分じゃないですしね」
「新幹線の改札のところに、わらび餅とか八つ橋売ってるの見るとテンション上がらないか?」
「東京居るのに京都先取りだ〜! ってなりますよね」
「目移りをしている姿が柏木そっくりだったな」
「バレたか」

 駅の新幹線の改札口を入ってすぐの場所に、和傘がトレードマークの売店が佇んでいるのだ。それに目を惹かれてしまう気持ちも痛いぐらいに分かる。さすがに京都に行くのにここで買ってしまうのは勿体ないかも、と止められたが3人の目が無ければ耐えきれずに買ってしまっていたかもしれない。
 新幹線が発着するまであと10分ほどだ。お供のお弁当も購入した。仕事ではあるものの浮き足だっているのは、スポンサーからの「普段の姿を撮りたい」という意向があったからだろう。気兼ねなく旅行をしている姿をぜひ見せてほしい、とのことで3人の表情も幾分か柔らかいように思える。

「スケジュールは先日打ち合わせしたとおりになります。新幹線内でオフショット用に何枚か撮影させていただきますね。駅に着いたら先方が車の手配をされているので、そちらに乗ってコースを回っていきます」
「いくつかバスや電車を利用する場所もあったよな」
「はい。嵐山と伏見稲荷、あとは祇園ですね」

 嵐山は電鉄があるのでぜひ、とのことだ。後者は観光客がとりわけ多い場所なので車よりも公共交通機関の方が勝手が良いのだろう。 
 握野さんは、楽しみだなあ、と目をキラキラとさせている。


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