++正常


 刃で肉を断つ感覚であったり、跳躍して風を全身で切る感覚であったり、心臓を刺される感覚であったり、生身ではない私がすることだからだろう。酷く現実味がなく、全てが終わった後にご飯を食べ、友人と他愛もない会話をし、ぐっすりと眠ることができる。しかし人を斬った日、この世のものではない造形をした生き物を斬った日、平然と生活をする自分に、眠りに落ちる前まどろみの中問うことがある。
 私は果たして、正常なのかと。


「分かる」
「私だけじゃなくて安心した」
「特にアタッカーは直接感覚があるだろう。肉を断つ感覚が生々しい」
 同い年ともあれば連む機会も多い。風間は小さく頷いた。というのもボーダーは中高生の比率が圧倒的である。それ以上の年齢、言うなれば飲酒が出来る年齢の隊員は限られているし、年長であれば隊の長となる者も多いので必然的に親交は深まるのだ。
 そう言った者たちが集まるとどうなるかと言うと、いわゆる大学の飲みサーと同じである。飲酒と飲酒と飲酒と麻雀とゲームとほんのひとかけら休んだ授業のノートの写しを貰ったりレポートを徹夜でしたりとろくでもないことをしている。
 諏訪隊の部屋にはよく人が集まる。それこそ隊員以外も、である。ある者は菓子を持ち寄り、ある者はゲームとプロジェクターを持ち寄り、ある者は酒を持ち寄り、この部屋の主と言わんばかりのくつろぎっぷりだ。
 この部屋の主、この隊の長をしているのだからそう言っても過言ではない。彼は私たちのその話をビール缶の縁を指で掴みながら仰ぐと一息ため息を吐く。
「……バイオハザードしながら話すことじゃねえだろ」



20220123


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