++現在位置の共有について/ドラスタ、クラファ




※P不在

「プロデューサー遅いな」
「遅延でしょうか」

 時刻は16時を過ぎたところだ。いつも余裕を持って打ち合わせの時間を設定するプロデューサーにしては珍しく、既に定刻を過ぎていた。
 桜庭はスマートフォンの画面を見て一言告げる。

「今駅を出たところだから、あと10分もあれば来るんじゃないか」

 なぜ桜庭がそんなことを知っているのか、と言う話である。天道と柏木は目配せをし、どちらがその疑問を桜庭に切り出すかを互いに押しつけあった。翼から聞いてくれよ、いやいや輝さん聞きづらいですよ、俺から聞いた方が空気がちょっと変になるだろ、という無言のやりとりが行われ、少しの沈黙のあと、その押しつけに負けた柏木がええと、と言葉を濁しながら尋ねる。

「なんで薫さんがご存じなんですか……?」

 よく聞いた、と天道が頷いた。全然素朴な疑問で、いやだってほらリンクのグループトークにメッセージも来ていないですしどうしてなのかなあって、と柏木が続ける。
 その微妙な空気感に桜庭はやや困惑しながら答えた。

「プロデューサーの財布の中に入っている現在位置共有のタグと僕のスマホが連携しているため……?」
「「えっ?!」」

 素っ頓狂な声がミーティングルームに響いた。
 桜庭とプロデューサーはそういう間柄なのか?、自分たちにそんな大切なことを伝えないのは水くさい、例えそういう間柄だとしても勝手にそういうものを相手の私物に忍ばせるのは犯罪だと思う、というか桜庭が束縛が強くてそれを承知でプロデューサーも受け入れているということか、という言葉を喉のすんでのところで天道が押し込んだ。柏木も同じようなことを考えているに違いなく、2人は静かに表情を百面相させている。

「君たち、僕に失礼なことを考えているだろう」
「単刀直入に聞くけど、桜庭とプロデューサーは付き合っているということで合っているか?」

 よく聞いた、と言わんばかりに柏木が頷く。

「付き合ってないが」
「なんで……?」
「便利だからじゃないか?」
「便利だから?!」

 プロデューサーの私生活さえも手に取って確認できることが便利だからということか、と天道が吠えそうになった。

「すまない、これは僕の説明不足だ。プロデューサーが便利だからだろう」
「プロデューサーが便利……?」
「よく財布や車の鍵をどこにやったかを忘れるから、それの保険のためにタグを入れているらしいんだが」
「よく、あれ〜無い〜って言いながら鞄の中探してますよね」
「探している時点でそのタグの意味あるのか?」
「スマホで探せばいいのに、って、あっ、スマホも失くしてるってことですか?!」
「自分のスマホ以外に誰かのスマホでどこになにがあるか確認出来たら楽だという理由で僕のアカウントが連携させられている。天峰くんも確か知っているはずだが……」
「本末転倒じゃねえか」




***




「ぴぃちゃん来ないね」
「ええと、ああ今向かってますよ事務所に」
「なんでしゅーくんが知ってるの……?」
「え、いや百々人先輩顔怖」

 ミーティングルームにはクラスファーストの3人が集まっている。プロデューサーはまだ来ない。打ち合わせの設定が直前だったこともあり、この日であれば昼過ぎだったら……、ということだったので、直前まで何かしら外せない仕事があるに違いなかった。
 花園の表情にやや気圧されて天峰が仰け反った。

「位置情報連携してるから……?」
「なんで?!」
「探し物するときに便利だから……?」
「なんでしゅーくんが知るまでに至ったの」

 天峰の隣に座った花園が詰め寄るように尋ねてくる。口許は緩く弧を描いているのに目だけが笑っていない。天峰はその隣の花園を極力見ないようにする。どうして鋭心先輩は助けてくれないんだよ、という心の叫びが滲み出ている。

「たまたま居たからですよ」
「じゃあ僕でも良いんじゃない?」
「別に他意は無いと思いますけどね……? たまたますぐ側に居たのが俺だっただけで……」
「まあ同じユニット2人に教えるのも意味が無いだろうな。こういうプロデューサーが遅れた時に確認する人間は1人居ればいいだろうし」
「ず、ずるい……」
「プロデューサー来たら教えて貰えばいいじゃないですか」
「自分から言うのは違うから……!」
「ああ、でも確か連携できる人数って限られてたような気がするな。俺と、薫さんと、翔真さんと、」
「しゅーくん以外にも知ってる人居るってこと?!」

 花園が顔を手で覆った。ムンクの叫びのような表情をしている。アイドルにあるまじき顔だ。

「泣きそう」
「餃子奢りますよ、男道ラーメンで」
「2皿?」
「はい、鋭心先輩が」
「俺か」

 とんだ流れ弾である。眉見は険しい顔をしながら頷いた。

「でもぴぃちゃんってお財布とか鞄、おうちに持って帰るでしょ? その気になればいつ頃帰ってて家もここらへんなんだなあって調べられるよね?」
「というか知ってますよね、プロデューサーどこに住んでるか。俺見てますからね百々人先輩が前プロデューサーが家に忘れ物したから寄ってくるねって車停めたところで地図にピン打ってたの」
「……確認しそうな人間には教えてないだろうな」







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