++告白/柏木翼



「すみません名前さん……」

 彼が私の眼前に立ち、目を僅かに背けながら切り出した。手をぐっと握って、唇をぎゅっと噛みしめる。意を決したように唇を僅かに開けて、それから言いにくそうに口を閉ざすという行動を何回かした。そうして拳をぎゅっと握りしめた彼は、あ、あの、とどもりながら切り出す。

「今日一日、名前さんの胸元にばかり目が行ってしまってごめんなさい!」

 耳を真っ赤にして、直角に謝った彼に笑ってしまった。

「視線は感じるなあって思ってたんですけどね」
「本当に! ごめんなさい! あの、その、シャツが今日第一ボタン無いシャツになってて、それですごく気になってしまって……!」

 ああこれか、とシャツを見る。学生時代にスーツの何点セットで買ったときに自分で選んだワイシャツだ。学生のときより太ってしまったから、あんまり着たくなかったのだけど、昨日急いで回した洗濯物が乾かなくて、仕方が無いと着てきたのだ。
 仕事中もちょっとキツいなあとは思っていたのだけど。高いところにしまっていたファイルを取りたくて、彼に手伝って貰ったあと、とても言いにくそうに口をもごもごさせながら彼が切り出したというわけだった。

「……それと第二ボタンの隙間から、見えてるのでどうにかしてください……」
「え、そんなに分かりやすいですか? 何色か分かっちゃいます?」
「薄い青……」
「キャミ一応着てるんですけど、分かるものなんですねえ」

 柏木さんが、顔を手で隠しながら言った。とにかく、と彼が色々と動いていたせいではだけていた私のジャケットを正す。

「名前さん、そのシャツ着るの禁止です!」
「見苦しいですもんね。もうちょっと痩せてから着ます」
「そういうことじゃなくて、好きな女性が無防備な姿で居るのを他の人から見られてるの、いやじゃないですか……!」
「……えっ?」
「あっ」

 これ渡しておきます!、と彼が私の腕にファイルを乗せる。頭が果てしなく混乱している。今好きな女性って言った? 誰が、誰に。とんだ爆弾を投げ込んだ彼だ。







お題箱より。柏木翼からの告白。
20171115



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