性的な意味で/舞田類

「わお、名前ちゃん、so cute!」
「げっ、類さん……。この年になって可愛いって言われると、ちょっと」

 アップした髪の毛に華奢なヒール。紺色のパーティードレスは首筋と腕が大きく開いているせいでどうにもそわそわする。普段仕事で着るのはスーツなのでそれも相まっているのかもしれない。
 小部屋でそそくさと着替えて化粧を終えて、あとはタクシーを待つのみといった所で彼と偶然鉢合わせしてしまったことに顔を顰める。それに類さんはははっ、と笑って美人が台無しだよ、名前ちゃん、と言うものだから悪い気はしないけれどどうにも気恥ずかしい。

「what? 君俺と年齢そんなに変わんないじゃん」
「まあそうですけど……複雑と言いますか……」
「どうしたの? party?」
「懇親会って感じですかね。大手テレビの何十周年記念の式典だそうです。人脈作りに行ってきます」
「ひとりで?」
「先に社長が行っているので、現地で待ち合わせです」
「oh, I see……」

 ふーん、と類さんが私を眺める。がぱりと開いた肩や腕が防御力が無くなっているような気がしていやだ。そんなにまじまじと見られるとどこかやばいのだろうかと思ってしまってごくりと唾を飲み込んだ。昨日丹念にボディケアをしたし、今日ドレスを着るときもストラップレスのブラジャーが見えないようにきちんと調整したはずだ。

「なんだか名前ちゃん、sexyでちょっと新鮮かも」
「やだ、お世辞は止めてくださいよ。照れます」

 私が頬を押さえて照れた仕草をするとお世辞じゃないんだけどな〜、と彼がぐいっと私に近付く。頬と頬がくっつく距離、すいっと彼がその間合いに入ってきて思わず肩が上がる。後ずさる私の肩を彼はやんわりと掴みながら、お持ち帰り、されないようにね、と低く囁いて首筋にひとつ口づけを落とした。

「……類さん、誰彼構わずこんなことしてないですよね?」
「えー心外だなー! 名前ちゃんだけだよ!」

 にこりと笑って送りだす彼に私はため息を吐いた。
 柔らかな唇が首筋に当たる感触も、耳元で低く囁かれた彼の普段聞かないような声音も、想像よりも低い体温も、全てが身体にこびりついている。







20170711

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