3/1たとえば、愛のことばを紡ぐこと
何気ない毎日が好きだ。朝起きたら彼が少し早く起きていてカフェオレを準備してくれている朝であったり、太陽の暖かな光を感じながらお昼寝をする午後だったり、一緒にお酒を飲む夜であったり、その時甘えて肩にこてんと寄りかかってくる彼の横顔であったり。彼と過ごす毎日はとても幸せで、そこに愛の言葉があれば更に幸せで溶けていきそうなくらい。
「――おはよう。よく、眠れた?」
おひさまのにおいがするシーツ。起きたばかりでぼんやりとした視界の中でも、彼が至近距離に居て、嬉しそうだけれど照れたような少し困ったような顔をしているのがよく分かる。いったいどうしてだろう、と見れば、彼の服をがっちりと掴んでいるようだった。
ベッドの枕元に置いた目覚まし時計を見れば、時刻はいつもセットする時間から30分ほど過ぎている。彼の目覚めはとてもいいから、きっと私が起きる前に止めてしまったのだろう。いつもはぴったりの時間に優しく揺さぶるように起こしてくれる彼だ。どうして30分も過ぎているんだろう。
「今日って、休日?」
「いや平日」
「あの、時間……」
「うん。少し急がないとね」
握っていた彼の服をばっと離して、布団から飛び起きる。ばさっと翻った布団。寝る前には暖まっていた部屋も、今は暖房が切れて寒いくらい。ぶるりと震える。
冷たい床。いそいそと支度をし始めるのは彼も同じだった。シャツを着ながら、それが終わると各々で朝食の準備をする。コーヒーを淹れるためのお湯を沸かす彼にパンをトースターで焼く私。
「もう! ハルトさん起きてるなら起こしてくれればよかったのに……!」
「ごめん、君が胸にしがみ付いていたから、幸せで」
ふと見た彼が、頬を緩めて眉根を下げて、幸せそうに彼が笑うものだから言葉に詰まってしまう。淹れたてのコーヒーをテーブルに置いた彼は、パンを小皿に移すために私の隣に来る。肩と肩とがくっついてしまう距離で、ごめんね、今度はちゃんと起こすようにするから、と再度言われてしまえばもう何も言うことが出来なかった。すっかりと口を噤んだ私に、彼が――こういうことを言われてしまうと、表情をされてしまうと私が何も言えなくなるのを彼は良く知っている。それがたまにずるいと思ってしまうのだけど。春の小雨のような柔らかな口づけを、私の額に落としながら言った。おはよう、今日もすてきだね。私だけに向けられたその言葉にとけてしまうほどの幸せを感じた。おはよう、私もそう思ってた。ハルトくん、今日も好き。そう返答すれば、俺も好きだよ、と更に言葉が返ってくる。
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