
寒冷地におけるサラマンダーは元々いたわけではなく、サラマンダーのもたらす火と熱を用いて商売をしようと企んだ人々が連れ込んだものが多い。当初は飼育方法が確立されていなかったためサラマンダーたちはひどい目にあったそうだ。なんて悲しいことだろう。今はそういうこともないみたいだけど。
この本はとても分厚かったけれどするする読めてしまった。だってすごく面白かったもの。友人たちには少し驚かれたけど、これくらいの量なら何ともないのだ。挿絵も多かったし。
難しいものを読むはずだったけどこれはこれで面白かったからよし。今日もまた新しい本を探さないと。ああでもその前に、レポートを仕上げないといけなかった。
出されていた課題は薬草学。レポートに必要な本を探して、ついでに今日からのお供を探す。薬草学関連で、変わった植物の本でもあると嬉しい。
本棚の間を巡って、目当ての本を何冊か取る。夕ご飯の時間までに半分くらいは目を通せるだろうか。なんて思いながらいつもの場所に足を向けると、やはりそこには先客がいた。
数日前にあった彼はその時とは違う本を読んでいる。私が少し前に読んでいたドラゴンの育て方。
彼は少し目線を上げ私の方を見た。整った容姿の男の子だと思う。
「ここ、貴方の特等席ですか」
「そうです」
素直に答えると、彼は読んでいた本にしおりを挟んで閉じてしまう。荷物を片付けようとする彼を引き止めるため、声をかけた。
「でも、私だけのってわけじゃないから」
「邪魔になるでしょう」
「邪魔になんて。この前もそうだったけど、貴方とっても静かだから気にならないよ」
「そうですか」
持ち上げかけていた本を置いて、彼は座り直す。私はほっとして、やっぱり彼の斜め前に座った。
本を開いて、羽ペンと羊皮紙を取り出す。今日は先にレポートだ。ご褒美の本は後に取っておこう。柔らかな指触りの紙を捲って、指で文字をなぞっていく。
時折、斜め前の彼を盗み見た。表情一つ変えないで、文字を追う瞳だけが上から下は、また上へと動いている。没頭しているらしい。私も集中しないとと思いながら、羽ペンを握った。
「夕食の時間ですよ」
その声にハッと気づいた時には、窓の外はすっかり暗くなっていた。顔を上げると彼は荷物を束ね、こちらを見ている。
「ありがとう」
急いで荷物をかき集め、カバンの中に入れていく。彼はそんな私をしばらく見て、それから私が広げたままの羊皮紙たちを丸め始めた。
「ありがとう、ごめんね。手伝ってくれて」
「いえ」
これまでスリザリンの知り合いはいなかったから、噂話だけでなんとなく感じが良くない人たちなのかと思っていた。が、そうでもないらしい。失礼な思い違いをしていたと思いながら彼から荷物を受け取って、本を抱き抱える。
「本当にありがとう、ええと」
「レギュラス」
「レギュラス。私はクロエ」
「クロエ。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。じゃあ大広間に行こっか」
そう言って私は外に向けて歩き出した。レギュラスも、その後ろからついてきた。
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情交と街