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自室に戻った兵部は、ポケットにしまっていたキャラメルの空き箱を眺めていた。
先ほど、よろけた瀬名の腕を支えたとき、うっかり透視してしまったのだ。
その時見えたのは、瀬名が言っていた「怖い夢」の一部だった。
兵部が見たのは、軍の施設のような場所で横たわっている手負いの兵士たちと、
瀬名が最後に見た、ある兵士に責め立てられる映像だった。
一部の映像からも、見覚えがある感覚。
箱を開けて、最後のキャラメルを口の中で転がしながら、記憶の糸をたどり始めた。
「あれは…陸軍の野戦病院に似ている…しかしなぜそんな夢を瀬名が…」
野戦病院。兵部はこの場所に二度訪れていたことを思い出す。
その記録の中のヒントを探るように、瞳を閉じて集中し始めた。
兵部の記憶の中に、一人の女性が浮かぶ。
長い黒髪を首の後ろでまとめ、そのリボンと瞳は同じ…
「…赤」
そこで目を開いた。
ふと、窓の外の赤い夕陽が目に入る。
————「…でも不思議、兵部さんとはまだ会って2回目なのに、最近知り合った気がしないというか…
なんだかあなたのこと、信頼できるって直感があるの」
————「それは光栄だね。…まぁ、もしかすると前世か何かでご縁でもあったかな」
————「ふふ、もしそうだと嬉しいのだけど」
————「前世で縁のある人と、今世でも会えたとしたら、もうそれは運命だね」
先ほどのやり取りを回想する。
自分で言っておきながら「前世」「ご縁」という言葉に違和感があった。
何かを忘れている気がする。
「…まさかな」
広げたままのキャラメルの包み紙を片手で畳み込む。
先ほどまでの考え事を放棄するかのように、そのキャラメルの包み紙も空き箱も、ゴミ箱へ放り投げた。
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