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王牙学園。


ヒビキ提督が総帥を勤める軍人育成の中学だ。
国は今サッカーによって衰退しきっている。それに危機を感じた提督が、若い世代から軍事教育をと政府に駆け寄って作ったのがこの学園なわけだが、軍事教育を謡うが故に女子生徒は生徒全体の半分以下、さらに言えば戦闘科はその中の5分の1ほどしかいない。

その中に彼女はいた。



教室で先日行われたテストの答案情報をまとめたものが生徒一人一人に配られる。


「倉梨珀祢」

「はい」


その中で名前を呼ばれた少女が立ち上がった。
目立つ色をした髪と目はただでさえ注目をひく。しかし彼女が視線を集めている本当の理由は容姿などではなく、彼女自身の実力だった。


「よくやった倉梨」
「…ありがとうございます」


教師の言葉から、教室内の生徒は察した。倉梨はまた上位入りなのだ、と。


次々と配布されていき、それが終わるとともにHRも終わった。


「なお、順位は昼休みに公開される。」


教師のその言葉で締めくくれられ、教師が教室を出るなり教室はしばしばざわついていた。




















昼休みになると、購買部や食堂に向かう生徒が中庭に溢れ、行き交う。順位が纏められた電子ディスプレイは一番人の行き来があるこの中庭にいつも設置される。珀祢は食堂に行く時に必ずここを通らねばならないのだが、今日は人混みを避けた場所からディスプレイをみることにした。


「すごい、また倉梨さん2位よ!」
「ミストレくん3位かあ…」
「倉梨って子すごいよなあ」


遠くからでも話が聞こえるほど珀祢は有名になっていた。バダップ、ミストレ、エスカバの3トップの間にいきなり割り込み、3トップを崩したのが彼女だからだ。軍事の世界は男社会、ましてや実習が多い戦闘科の女子生徒が3位以内に入るのは珀祢が初めてだったのだ。


「またミストレくん抜いたの…信じられないわ」
「調子にのっちゃって…絶対コネ使ってるわよ、ミストレくんの方がずっと実力は上だもの」
「だよね」


ミストレことミストレーネ・カルスには親衛隊がある。容姿端麗、勉学もできる彼がモテるのはまあ当たり前だろうと珀祢も思っているが親衛隊というものには興味をもたなかった。

順位もわかったことだし食堂に行こうとぱっと後ろに体を向けた瞬間。


「君が倉梨珀祢か」
「…!!」


噂の奴がたっていた。




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clegateau