02


緑色の髪、一部分を頭の上で小さく二つ結い、他のをみつあみにして右肩に流し置く彼の髪型をみるとどうも悪魔にしか見えない。

珀祢は噂のミストレーネ・カルスを目の前にして1分ほど固まっていただろうか。ふと何か思い付いたような表情を浮かべるとさっと彼の真横を通り過ぎようとした。


「おいおい、待ちなよ!」


すぐに肩を掴まれてまた向き合わせられる。先程の自信たっぷりな顔ではなく、少し悔しそうな顔をするミストレに珀祢は首を傾げた。


「お前、俺の事知らないわけじゃないだろ?」
「ミストレーネ・カルスでしょ」
「なんだ、知ってるじゃないか。…じゃあなんで無視したんだよ」
「…関わったらまずいと思った」


色々な意味で
と心の中で付け足す。ミストレは大きなため息をつくと珀祢の肩を掴んでいた手を離し腕を組んだ。


「今時、この俺に関われて喜ばない女子がいるとはな…君には呆れたよ」
「そう、私はナルシスト気味なミストレ君に呆れたわ」
「そうか…って呆れるな、俺の美しさが分からないお前がかわいそうだという話をしてるんだ」


ってそもそもこんな話をしたかったんじゃなかった、と頭を横に振りながら自分に言い聞かせるように言うミストレ。珀祢は去るタイミングを失っていたが、本来の用件を聞けば解放されるかもしれないと希望の光が見えてきた。


「食事はまだだろ?」
「これから食堂に行こうと思ってたところだ」
「じゃあ俺と食事をしようじゃないか」
「…はあ」


とびっきりのキメ顔で言われたら断るわけにもいかなくなり頷いてしまった珀祢。断ったところでまたうだうだ言われるくらいなら、食事しながら奴の自慢話を聞いてあげた方が得策だと考えたのだ。


「じゃあ行こうか」


ミストレが先頭をきり、それについていく形で二人は食堂へ向かった。




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