03 王牙学園は寮制だ。自宅から通う生徒もいるが、3分の2くらいの生徒は寮生活をしている。食事は寮の方にも食堂がありそこで朝と夜はとる事になっている。ちなみに、学園の食堂も寮の食堂も作る人は同じなので、昼食は購買部にする者もいる中、二人は食堂にやってきたわけだが。 購買部で買い損ねた者、最初から食堂で食事をとる者、様々な生徒が二人に注目していた。 あのミストレーネカルスと倉梨珀祢が一緒にいるからだ。 「倉梨は何にする?」 「トマトジュレのサラダパスタ…かな」 「奇遇だね、俺もそれにしようとしてたんだよ」 会計はしておくから先に座ってなよ、と珀祢に言い列に並ぶミストレ。 ナルシストというイメージしかなかった彼が紳士的行動をしたのにはさすがに驚いた珀祢は椅子についてもしばらくミストレを見つめていた。 「はい」 「ありがとう」 パスタのお金を渡そうとしたらいいと断られた事になお不信感が募る。なんだか気前が良すぎる。 「…ところで、用件は何」 食べ初めてからしばらくして、ミストレから切り出す様子がなかったので自分から言ってみた珀祢。ミストレはフォークを止め紙ナプキンで口を綺麗にすると肘をついて言った。 「俺の親衛隊隊長になれよ」 「…は?」 「今のところ親衛隊隊長は自称ばかりなんだよな。色々めんどくさいし、俺が指名すれば皆納得すると思って」 「…なんで私なの」 「相応しいからに決まってるだろ」 ミストレと同じようにフォークを止めていた珀祢だが眉をひそめると再びフォークを動かしパスタを食べる。 「……」 「……」 「……」 「……何か言ったらどうなんだよ」 「何かって?」 「やるならやる、って言えばいい」 「いや、丁重にお断りさせていただく」 しばらくの沈黙の後に、これだ。肘をついて珀祢の様子を見ていたミストレはお約束のようにずるっと肘を滑らし呆れる。そうしている間に珀祢は食べ終わり、手を合わせて「ごちそうさま」と言っていた。 「本当にパスタのお金いらないの?」 「いらねえ!!!」 ミストレの悔しそうな声が食堂に響いた。 _ [mokuji] [しおりを挟む] 【clegateau】 |