非日常は突然に 「組頭、調査終了しました!」 「ご苦労。さっさと撤収するよ」 灰色の服を纏った数人の忍者が、城から離れた森の中で佇む顔に包帯を巻いた男に報告する。 彼らはタソガレドキ城に属する忍者達…人呼んで、タソガレドキ忍者隊。 包帯の男は雑渡昆奈門。某城の調査から戻ってきたタソガレドキ忍者達の頭だ。 「…あの、組頭!」 忍者達の後方にいた諸泉尊奈門が何かを背中に背負いながら前に出る。 「何だ」 「その…ここに来る途中、女が倒れていまして、」 背中に背負っていたのは、諸泉と同じ年くらいの黒髪の女だった。衰弱してるのか息も弱く、よく見れば足や腕や顔に傷を負っていた。 「戦に巻き込まれたのかもね」 「連れ帰っては、ダメでしょうか…!」 諸泉の腕に抱えられている女に目をやる雑渡。見たところ諸泉とは歳が近いようにみえるし、もしかしたら色の術を覚えさせれば優秀な忍者になるやもしれない。 「連れ帰ってみればいいと思うよ」 「組頭!」 「ただ、その子がタソガレドキにいてもいいか決めるのは殿だ」 「…はい、分かってます」 「私からその子の話をする。…城に戻るよ」 「はい!」 (あの子どうなったんだろう…) 諸泉は雑渡が殿に女の事を報告しに行ってからずっとその事ばかり考えていた。 数年前、雑渡に父親を助けてもらって以来、彼は雑渡のように自分の事を省みず人を救えられる器の人間になりたいと思っていた。 まだあの女の事は何も分からない。もしかしたら他の城の女中かもしれない。 あの女はどうして怪我をしていたのか。何者なのか。 「考えたらキリがない…」 正体も分からない女を、殿が城に置いておくなど有り得ない… 散々考えた挙げ句出た答えはそれだった。もう無理だ、肩を落として木に寄り掛かっていると 「成功だ」 「組頭!?」 ちょうど木を挟んだ向こうに雑渡の声がして諸泉がすぐに体を起こし自分がいる反対側の雑渡の前に立つ。悠々と腕を組む雑渡は諸泉を見て、言った。 「だから成功だ。彼女は今日からタソガレドキ忍者見習いとして忍者隊に所属となった」 「く、組頭ぁ…!」 「止めろ、気持ち悪い」 「あぐっ」 目に涙を浮かべ喜ぶ諸泉が雑渡に抱き着こうとするが、それを雑渡がさっと避けた為木に突っ込む事になった諸泉。 今日から、タソガレドキ忍者達は非日常を迎えることになる。 記録:雑渡昆奈門 諸泉尊奈門が拾った傷だらけの女を保護した。彼女はまだ目を覚まさないが起き次第話をするつもり。ちなみに殿には女がいないタソガレドキ忍者隊には色術を使えるくの一がいてもいいのではとかなんとか言ってみたら彼女の忍者隊所属を了承してくださった。 以上。 _ [mokuji] [しおりを挟む] |