離別編Act-1 闇の始まり
パパが死んだ。
正確に云うと水無怜奈に殺された。

組織に潜り込んでいるCIAの狗―… 水無怜奈ことキールに殺された。

江戸川コナンが偽装殺人を計画し、パパはその計画に乗った。

―… 私を護る事よりも、組織を壊滅させる事を、灰原哀を護る方を優先した。

警察病院で車に残っていたオペラ座のキーホルダー。
パパとパリに行った時にオペラ座のボックスシートに上がった人しか買えないというのを買って貰った。
少し焼き焦げていたけれどシートの間で奇跡的に原型を留めていた。

私の手元に残ったパパの形見。

子供だから、と霊安室の遺体に掛けられた白布を捲って貰う事は出来なかった。

許されたのは、唯一裂傷の無かった手に触れる事。
警察は、ドライブ中の一般人が眉間を撃たれ、怨恨殺人と発表した。
白馬のおじ様が警視総監だった事から、探君にも私にもボディーガードが付く事になって、白馬の家のSPも増員された。

私にはパパの手じゃない事が分かったけどパパに携帯を貸したコナン君が、指紋が取れたら照合出来ると言って、そのまま指紋がパパのと合致した。
ジョディおばさんもキャメルおじさんもパパが死んだと、組織に殺されたと信じ込んでいる。
でも、あの手はパパじゃない。

"パパは、いつでもお前の傍にいる"
"赤井桜になる気はないか?"

そう言っていっつも抱き締めてくれたパパ。
私だけのパパ。

人気アナウンサーの水無怜奈が交通事故で病院に入院してから、パパは白馬邸に来る暇がない程多忙になった。
コナン君も、学校にジョディさんが来ると、哀ちゃんと私から逃げるようにバタバタと駆けて行く。


"パパ、桜に隠し事、してないよね?"
"お前に隠し事はできないさ。"
"どこか、お仕事で遠くに行くときは―… ちゃんと話してくれるよね?"
"あぁ… 勿論"

事故が起こる前の日も、今週末はトロピカルランドに連れてってくれると約束したのに。

パパは、私を裏切った。

パパが交通事故にあったと、授業が始まった直後に探君がドタバタと迎にきた時、コナン君はクラスメートの中で唯一人、私から視線を合わせようとしなかった。

私と視線が合った時、慌てて顔を反らした。

(工藤新一。 組織壊滅だけを考えて―… 私から、パパを奪った。)

パパに追われて自害した上、身代わりとして使われた憐れな構成員。

(これが工藤新一のやり方なら、私は私のやり方で報復をする。 水無怜奈の弟を、工藤新一が大切にしているもの全て、唄媛の私が壊す―…)


♪・・・・・・・・♪

Amazing grace how sweet the sound
That saved a wretch like me.
I once was lost but now am found,
Was blind but now I see.

'Twas grace that taught my heart to fear,
And grace my fears relieved,
How precious did that grace appear,
The hour I first believed.

Through many dangers, toils and snares
I have already come.
'Tis grace hath brought me safe thus far,
And grace will lead me home.

♪・・・・・・・・♪


探君に頼んで来葉峠迄連れてって貰って、憐れな構成員の為に唄った。

私の声は武器。
人の魂を癒す事も、人の心を殺す頃も、操る事もできる。

パパの身代わりにするべく、死体を秘密裡に保存され、顔も認識できず死亡時刻が分からなくなるほどまで業火に包まれた―… 楠田陸道

この唄で、彼の魂を送ろう。

パパの領域と別れを告げる。

私を裏切った事を、私に黙って居た事を、

永遠に後悔させる為にー…
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