Act-19 運命のリサイタル 後編
俺の予想した通り……

ディーヴァの歌声は見事だった。
最後の一音がホールから消えると顧客たちが総立ちで拍手をする。
俺も、その中の一人になって拍手をした。
歌媛と呼ばれるのは伊達じゃない。

ハイソプラノからテノールまで自在に操る見事な音域

セリの上に立っているディーヴァがカーテン越しにふわりと礼をするのが分かる。
ドレスの裾をつまむような優雅なしぐさ。
そしてディーヴァの姿ごとセリが下降を始める。
カーテン越しにセリが奈落にしまわれると、シャラッとした音と供に黒いカーテンが落ちてきた。

広い舞台が現れる。

20分の休憩だが、アナウンスは入らない。
片手にハンカチと化粧ポーチを持って立ち上がる夫人たち……
そしてわざとらしく空咳をして立ち上がる男性軍。
あと数分もしないで”売約済”のホストとホステスたちがやってくる。
せめて、明美と顔を合わせないように場を外してやろう

俺は入り口の警備に、仕事に戻る事を伝える。

「大変ですね ご苦労様です。<リサイタル>後のイベントには出ないんですか? 幹部であっても招待状を持ってますから、気に入った歌い手がいたら食事に連れ出せますよ?」

「ははっ! これでも彼女がいるんでね。ついでにロリコンでもショタコンでもないつもりだ」

ウィンクをして誤魔化す俺。

「ははっ! そうですよね。歌い手は16までお手つき不可な商品ですし。」
「まさか招待されると思ってなかったからな。 お前たちも最後まで気を抜くなよ。ディーヴァはジンが守るから兎も角、歌い手達の身を守ってやらないと次に支障がでてしまう」
「その通りですね。歌い手達と夜を一緒にするのは赦されていませんから、食事先に迎にいくだけなのでまだ、楽ですよ。」
「…… そうなのか?」
「まだ12〜15ですよ?躰に傷ついて歌えなくなったら大変ですからね。歌い手は16までは綺麗な躰で教育するので規則なんです。 男の子は変声期すぎると声変わるので声によりですが」
「なる程…… じゃあ、俺は着替えてくるよ」
「はい。 では後ほど」

商品は大事にするという事か。

俺は軽く手を振って、関係者の階段を降りる。
割れんばかりの拍手に乗じてスイッチをいれてある。


(あと10分もすれば戦が始まる。)


鬼がでるか蛇がでるか
他の所がせめてくるのが先か俺の仲間が先になるか。
わくわくするような昂揚感が
俺を 襲った……
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