Act-01 輪廻 後編
日本からの帰り道。
車椅子で見送りに来てくれた祖父
何の気まぐれか見送りに来た両親と弟に一番吃驚したのはお祖父様よりも私だった。

「雪乃姉様……」
「何?」
「僕…… 姉様を超えて見せます。……あと10年 もっとかかるかも知れないけどっ……!」
「敬之……?」

弟と、初めてのまともな会話。

「昨日、お姉様が付き合っているという製薬会社の事を、司に聞いた。 僕が留学する高校の公式ページの卒業生のデータの中に残ってた。」
「! そう。アーチの事が」
「僕、負けたくないと思った。 僕が学ぶのは最終的には経営学だけど、だからっ! それだけ言いたくて」
「お前は春日の跡継でしょう。お祖父様の孫ですもの。きっと、できるわ……」
「そう、かな」
「お前はまだ高校生。それに全国模試の結果もいつも上位。心配はいらないわ。お前もきっと飛び級で大学に進学できる筈よ。」

(もし、10年後、15年後…… 敬之が春日の跡取りにふさわしい男になっていたら お祖父様から頂いた株の名義を変更しよう。敬之の名前に)

「ー…雪乃」
「はい」
「卒業したら、向こうで暮らす、と云ったな」
「はい。アーチが勤務する病院で医者として」
「お前は春日のオーナーとしての株を持つ事になる。それでもか」
「オーナーといっても名前だけ。実際の経営はお祖父様とお父様、そしてお母様が実権をお持ちです。 それに経営学を学んでない私にはお父様の秘書としても使い物にはならないでしょう」
「全く。役にたたない娘だこと」
「お母様には息子がいればいいだけでしょう。 ―… ご機嫌よう」

素直になれ、という方が間違っている。

でも、弟は、敬之は間違いなく昨日と何かが違っていた。

スマホの録音機能を使ってメモに残す。
亜米利加に帰ったら、彼の家の弁護士を通じて、書類を用意して貰おう……
そうして、ファーストクラスの椅子に身をゆだねて… 紅茶を貰って、彼に当てて事情を説明したメールをして……3時間ほどした時だった。


殆どトンボ帰りで多少の時差で転寝していた私は、ドン!という音と、機内のザワめきで目を醒ました


「榊? 何か起ったの? 気流が乱れたの? 病人とか?」
「いえ、どうやら違うようです。 機内に銃を持ち込んだらしく…」
「銃!?」


その直後

旅客機をジャックしたという放送が入った。



自爆テロ…… だった。




「雪乃様っ!」
「榊っ!? 無事!?」
「大丈夫です! 早く救命胴着を! ショックに備えて下さい!」
「分かった! 榊も早く!」
「自分は大丈夫です! さあ! お早く!!」

下の階から上に吹きあげてくる爆風。
榊が救命胴着を着せてくれて、自分の分も取り付けて…… 落ちてくる酸素マスクを取り付けたけれど、揺れる機体
榊が、自分の躰の中に私を入れて守ってくれる。

「榊…… 御免なさい……」
「大丈夫です。 自分が…… 榊がついていますから……!」
「榊っ 私の所為で。去年、2人目の赤ちゃん生まれたばかりなのに」
「雪乃様。ここは陸にも近い。心配せずに目を瞑ってて下さい」


悲鳴
怒号
泣声


でも


これで……

私も たくさんの

しがらみから解放されるんだと思うと……

少し

安堵した……
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