Act-02 転生 前編
口の中に生温かいモノが入ってくる

苦しい

息が出来ない……!

何が会ったの?!


榊!


榊、何処!?
私の留学が決まった時、お祖父様の秘書として働いていたけれど、私の留学の手続きやマンションの手配、学校の手配、全部してくれた大切な人。
両親と私の不仲なのを知って、兄のように沢山のアドバイスをくれた人。
生活が落ち着くまで面倒を見てくれて、それからも2〜3ケ月に1週間程、様子を見にきてくれた頼もしい相談役。
彼と出会う前、私は榊に初恋をした。
最もすでに恋人がいて、その恋が叶う事は無かったけど、それでも榊は大切な相談役だ。


―…… 雪乃様!!

覚えているのは、榊が私の躰に覆いかぶさるように守ってくれた瞬間


私は海に落ちたの?


躰が痛い。
何が起こっているの?

下腹部が痛い
息が出来ない。
苦しい……!!




た す け て ……!



視界の片隅に赤色が入る
誰かわからないけど、血にまみれた人が倒れている。

誰?
私の上に、乗り掛かってる男が居る
奇妙な笑い声で私の首を絞めてくる
気持ち悪い


私、海に落ちたはずじゃ……?

なのに、私の倒れている場所は何処かの家の居間みたいで、豪華なソファとグランドピアノの足が見える

怒号が聞こえる
私の上に乗り掛かってる男が、引き剥がされて、喉に置かれて居た手が無くなった感覚があったけど、息が出来なかった。

(なにが……、おこってるの?)

分からない
榊……?
私を抱えてくれていた榊は何処に落ちたの!?

「…… !! 」

声が掠れて出ない。
喉が痛い。

遠くで人の声がする。
肺に息が入って来て、思い切り噎せた。

長髪の男の人が、自分の着ていたジャケットをかけてくれる。

「姫湖!」

男の人が私に呼び掛けてくる

「姫湖、確りしろ!」

ひめこ?

誰だろう?
私に似た、”ひめこ”という名前の人が居たのだろうか・・・

「姫湖! 返事をしてくれ! 俺だ!」

(俺?)

分からない。
激しく痛む頭。

初めて、愛した人に抱かれた時に感じた痛みに似た感覚が下腹部に走ってる
まさか、彼に抱かれたあの日の赤ちゃんでも授かってたのだろうか?

「子供が沢山欲しい。」
「ファミリーオーケストラが出来る位孫が欲しい」

そう、言ってくれた彼の両親。

「実家なんて忘れて、卒業前でもいいから嫁に来なさい。私達は、ずっと雪乃のような娘が欲しかったんだよ」

そう言ってくれて
春日の両親よりもずっと愛せた優しい人達

もしかして、流産?
だとしたら……
彼に何て云えばいいの?

「あ……」

喉が痛くて声が出ない。

「姫湖? 俺が分からないのか? 秀だ! しーちゃんが分からないのか?」
「しー ちゃ んー……? 」

知らない呼び方。

「わ か…… ら な…… 」

気持ち悪い
吐き気がする。
重くて、自由にならない躰
目に入った自分の手をみて、私は硬直した。

小さな子供の手。

(何 が 起こった の?)

分からない。
分からない 分からない!

「姫湖 ? どうし………… 「嫌ぁあああああああ!」」

しーちゃん、という人の言葉を遮る悲鳴が出て、私は、意識を手放した。
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