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09 大事にする事




『ふんふふん〜』

イヤフォンを付け、携帯で音楽を流ながら鼻歌を歌う。
目の前には、ドライヤーとブラシを持った反転した自分。

最近購入した話題の”air poos pro”にはどうやらノイズキャンセルという機能があり、外部の音を遮断してくれるっていうものがある。
ドライヤー中にこの機能を使えば、ドライヤーのゴーっていう煩い音も気にせず音楽を楽しめる優れもの。
ドライヤーの音が少し苦手だから、これに出会えて本当に良かったって思ってる。

日々こんな素敵なもの作ってる技術者さん達には感謝だよね。

手で髪の毛を一通り撫で、湿っている所がないことを確認し、私は音楽を止めた。
棚の上に置いていたイヤフォンのケースに両耳から外したそれを収納し、ドライヤーと一緒の棚にしまう。
イヤフォンは基本ドライヤーの時しか使わないから、一緒に仕舞っているが前に友人に高い買い物だね、なんて言われたのを覚えている。
というか、使うたびに思い出す。

そりゃぁ、3万もしたのに用途がドライヤーの時だけだから誰もがそう思うかもしれない。
人それぞれだよね、なんて思う。

それから折り畳みの椅子を引っ張り出し、浅く腰掛けて部屋から持ってきたボディクリームを手に取る。


実弥さん、待ってるかな。

昼間と違い、色々と準備万端にしなきゃとアレやコレややっていたら思ったより長風呂してしまた。
リビングでTVでも見て待っているんだろうな、っと彼を思い浮かべる。


あまり記憶はないけど、正直実弥さんと私の体の相性は100%。
いや、120%何だと思う。


ベッドの上の彼を思い出し、風呂上りで温まっていた体が更に熱を増す。


『はぁ〜、急ご急ご!』

ゴリゴリとマッサージしながら足にクリームを塗りたくる。
身体中にしっかりお気に入りのクリームを塗り込み、最後に鏡で自分を確認しスマホを片手に脱衣所を出た。



—ガチャ


『実弥さん、お、お待たせしました!』


思った通り、リビングではリラックスした様子の実弥さんがソファに腰掛けTVを見ていた。

「あぁ。」

短い返事をすると、私が座れる様に少し横にずれてくれた。
私は従う様にその隣に腰掛ける。
座ると同時にホラっと水の入ったコップを渡され、それを受け取る。


『あ、有難う』


コップの中の水を一口飲んで、びっくりし隣の彼に視線を向ける。
お風呂上がりの水分補給は、折角温まった体を内から冷やさない様に常温のものを飲むのは大事なことだ。
夏場は暑いからとキンキンに冷たい物を飲む人が多いが、本当に常温がいいのだ。
彼はそれを知ってか知るまいか、私に渡してきた水は常温だった。

料理もできて、こういう細かい気遣いも出来るって、完璧すぎませんか。
逆に少し怖いですよ。


「飲んだかァ?」

彼の凄さというものを感じながら、お水を飲み切り、コップを顔から離すとズイっと実弥さんが顔を近付けてきた。

『あ、う、うん』

「そうか、なら始めるかァ」


その言葉と同時に下半身がキュッとなった。
やばい、言葉だけでは流石に痴女かもしれない。

そう思っていたら、唇に柔らかい感触。


もう始まるの?
嬉しいけど、ちょっとだけ心の準備がっ
でも、もしかして、実弥さんも私と一緒でシたくて待ちきれなかったのかな。

—あぁもう、じゃぁ早くグチャグチャにしてほしい。

実弥さんは何度も触れるだけのキスを繰り返しながら、私の手に握られていたコップを机に置いた。

『んっ』

ニュルッと入り込んでくる舌。
その舌が異様に熱く感じる。
閉じていた目蓋を薄ら開ければ、ギラついた彼の瞳がしっかり私を捉えていた。
目が合えば、彼は目を細めた。


『はぁ、んっ...っっ...』

スルッと服の中に手が入ってくる。
プツンっとチューブトップのブラジャーが難なく外され胸が解放される。
肩紐のないそれはそのまま下に落ちる。

「ほんと、お前は…。あえて脱ぎやすい下着にしただろォ」

喉の奥でくつくつと笑う。
その通りなので特に反論はしない。
むしろ私も笑ってやった。

『だって、早くシたいもん』

彼の逞しい胸に両手を添え、今度は私からキスをする。
早くシたいけど、終わって欲しくないからジックリゆっくりエッチがしたい。

チュッチュっと可愛いリップをわざと鳴らしながら何度もキスをする。
その間、実弥さんはもそもそと私の服を剥ぎ取って行くので、私も対抗する様に彼の服を脱がして行く。

「なまえ。」

お互い上裸になり、彼のズボンに手をかけようとした時、それは止められた。

「悪ぃ。先に言っておくが、最後まで…シてやれねェ」

『………??』

何のこと?
今なんて言った?

その言葉を理解するのに数秒かかった。
彼は私の顔を見て眉をハの字にすると、優しく頭を撫でてきた。


「昨日と今日の昼でゴム使い切っちまったの忘れてた」

え、そんな事?
というか使い切ったって...。

私は寝室に転がっていたコンドームの箱を思い出す。
確かあのメーカーは1箱3個入り。
ゴミ箱に入っていた1箱と、ベッド脇にあった1箱で合計6個のコンドームがあったわけだ。

昨晩と昼まで6回も出したって事...?
流石に凄すぎる。


でもそんなことより…。




『…ぃぃ。』

「あ?」

『…生でいいから、最後までシて』

ゴムを買いに行けば色々解決する話なのだが、時間も時間で近所の薬局は閉まっている。
コンビニも割と遠いので買いに行くのが かなり面倒である。
それに私は薬を持っているから大丈夫だと、昼間に言った気がしたけど。


「……ダメだァ。」

両手が私の顔を優しく包んだ。

「もし子供が出来たら俺は責任取るつもりでいるが、そういうのは、しっかりしておきてえんだ。」

『……』

半分押されかかっていたエッチなスイッチがゆっくり元の位置に戻っていく。
熱が冷めていった訳ではない。
実弥さんがそういう所、真面目なのは知っていた。
けど改めて彼のその優しさや、私を大事にしようとしてくれている事がその言葉と、その表情からしっかり伝わってきたのだ。

男なんて大抵、生でいいよ何て言えば喜んで挿れてくるのに。
こんな事言う人、この人が初めてだ。

その事がジワリと嬉しくて、目頭が少し熱くなる。


「お、おい。そんなに生でシてえのかァ?」

実弥さんは私の瞳が膜を貼った事に気付いたのか、ギョッとして慌て出す。

私は頬に添えられた彼の手に自分の手を重ね、目蓋を伏せる。
ぽたっと両眼から一粒ずつ滴が頬を伝った。


『実弥さん…好き。』

「っ……あぁ、俺もだァ。」

両手の親指で片目ずつ私の目尻を優しく拭った。
衝動的に溢れ出た涙は一粒だけだった。

実弥さんの手が何だか擽ったくて、ふふっと声が出る。


『じゃぁ、この大きな手で、いっぱいイかせて?』

「っ…お前なァ」

『ふふ。私はお口でいっぱいシてあげる。』


実弥さんはニヤリと意地悪そうに笑うと、私を横抱きに抱え寝室へ向かった。








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