present



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「あれ、岩ちゃん?もう帰ってきたの?」

及川家のリビングに入れば、憎たらしい顔をしたエプロン姿のクソ及川がいた。

「も〜、急にジョギング行くなんて言ってさ...どうせ凪の事追いかけたんでしょ?」

「...凪は?」

「さっき帰ってきて今シャワー浴びに行ってるよ。」

「そうか。」

小さくため息をついて俺はソファに腰を下ろした。

まさか、影山に遭遇するとは思わなかったな。
しかもアイツ、凪と...。

2人を見つけた時の事を思い出して沸々と黒い感情が湧き出るのを感じた。
けど、影山にちゃんと話が出来たのは良い機会だった。

正直凪と同じ学校の影山の方がチャンスが大きいのは分かってる。
でも凪とは幼馴染だし、凪への理解度は俺の方が高いだろう。

お互いスタートラインは同じか..俺の方が数歩先かだな。



あぁ、....最近俺はどうかしてるのかもしれない。
インハイ前だっていうのに、凪の事ばかり考えている。
明日からはまた早朝ランに練習だって厳しくなるっていうのに、こんなんで大丈夫かと心配になってきた。

何のために、バレーを優先してきたのか。


いや、逆にこのタイミングで良かったのかもしれない。
なんたって、気分としては悪くない。
凪と一緒にいたいという気持ちも大きいが、バレーを今以上に頑張ろうという気持ちも同じくらいデカくなった。

と、思うが...。


「...はじめくん?」

「っ!....おぅ」

いつの間にいたのか、心配そうに俺の顔を覗き込む凪がいた。

「大丈夫?なんか..難しい顔してたけど..?」

...凪は本当に優しいな。

その心配そうな表情も、今まで見てきたいろんな表情全てが本当に愛おしいと思った。

やっぱり、絶対に影山なんかに渡したくねぇな...。


スッと目を細め、凪に手を伸ばした。


凪はキョトンとしている。
その柔らかな頬に俺の手が触れようとした時...。


ガシッ


「は〜じ〜め〜〜」

「げっ」

俺の手を掴んだ細い腕。
反射的にその腕を辿っていけば、ニマニマとムカつく笑みを浮かべた母親がいた。

「あんた、こんな所でイチャつこうとしないの!」

「してねぇよ!何でいんだよ!」

「こらこら、2人とも辞めなって」

そう声の方を見れば、父親までいた。
というか、及川母もおり、どうやら気付かないうちに皆大集合していたようだ。


「一君、徹と凪の面倒見てくれて有難うね〜」

「ちょっとお母ちゃん、寧ろ俺が世話してたんだけど!?」

「え!?絶対に私の方がお世話してたよ!」

「何いってんのさ、お前は兄ちゃん達に可愛がられてただけだろう?」

「うっ...全然違うし!」

及川が凪の頭を撫でまわし、母達がそれを見てケラケラ笑っている。

なんて言うか、平和な空間だと思った。

「あら、あんた達完全に仲直りしたの?」

「っ..それも全然違うし!」

「そもそも喧嘩してないしね。」

確かに。

ついこの前まで険悪というか、仲が悪そうだったのに兄弟というのは不思議なもんだな。
バレーが関わらなければ、凪だってずっとこんな感じだろうに。

正直インハイが始まってバレー生活が始まったらコイツら兄妹はまた仲が悪くなるんじゃないかって危惧している。


だからーー。


「...凪。俺らは烏野に負けるつもりはねぇからな。」

「っ...」

「え、急に何岩ちゃん...。」

及川は何で今それをいうのかって渋い顔をしてきた。
凪は何か言いたそうに口を開いたが、その口からは何も発せられず閉じられてしまう。

お前がまだ迷ってるのは知ってる。

だからこそ。


「本気でこいよ」


これは俺からの助力みたいなもんだ。

凪は瞳を大きく見開くと、口をキュッと紡いだ。








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