うちの学校には、女神様がおるんよ。
それはクラスも、学年も、学校全体も、みんなが認めとることやろな。
高校生活で、そんないわゆる“女神様”と3年連続で同じクラスになれた俺は、たぶんめっちゃ運ええんやろなぁって思う。
朝、教室に入ってきてみんなに笑顔ふりまくその女神様を見て、俺は心ん中で、つい拝んでまう。
『信介、おはようさん』
「おはよう。」
玉を転がすような声が、ダイレクトに脳に響いてきた。
俺の名前を呼んだその唇は、今日もぷっくりしてて、愛らしいなぁ。
『今日も朝練してきたん?』
「ああ、いつも通りや。」
『そっかそっか。ほな、おつかれさんの飴ちゃん、あげるわ。』
そう言うて、苺の絵が描いてある飴を差し出された。
「ありがとう」って受け取ったら、その白くてちっちゃい手に、自分の手がちょっと触れてもうた。
ほんの一瞬のことやのに、触れたとこからジワっと熱が広がって、それが体ん中にゆっくり染みこんでいくような気がした。
『明日も持ってたら、あげるで』
そうニコッと笑うて、女神様は席立って友達の輪に入っていった。
俺は渡された飴をじっと見つめる。
飴の賞味期限って、大体1年くらいやったっけ?
枕元に飾っとくには、ちょっと扱いが雑すぎる気がするわ。
せやな、家の神棚にでも飾っとこか…。
「信介、その飴くれや」
「大耳……なんの冗談やねん」
クスクス笑いながら、冗談や言うて俺の前に座る大耳。
「信介と女神さん、めっちゃ仲ええなあ、羨ましいわ」
「そんなことあらへんて。普通や…ただのクラスメイトや」
「いや、せやから、女神さんが男を下の名前で呼ぶん、信介だけやで」
「……まあ、そうやな」
俺が女神様に下の名前で呼ばれ始めたんは、2年の夏の話や。
話すと長なるから、今は回想せえへんけど、大耳の言う通り…
女神様は俺のことだけを下の名前で呼んでくれてるんや。
それを知ったんは、大耳や尾白に言われてからやった。
あの時は嬉しすぎて、真顔のまま涙が出そうになったわ。
「…せやから、その飴ちょうだい」
「冗談ちゃうんか?」
俺はズボンのポケットから出したハンカチで飴を大事に包んだ。
女神様のポケットに入っとったもんやから、飴の包装紙から全部が貴重に思える。
外の汚い空気に晒すんはもったいないわ。
帰ったら真っ先に神棚に飾ろ思てる。
え、関西弁むず(小声)
基本的には北くん視線のストーリーです!