「……今日は、月も綺麗やな」
昨日、信介と帰ってる時に言われた言葉や。
本家とはちょっとちゃうけど、あれって夏目漱石の「月が綺麗ですね」って意味やったんかなぁって思ってしもた。
ビックリして変な顔してもうたかもしれへんけど…
信介、分かってて言うたんかなぁ?
「死んでもええわ」なんて返したら、流石にあからさま過ぎるかなって思って言えへんかったけど…
あれ、言うべきやったんかなぁ。
でも知らんかったら急に何言うてんのってなるし…。
はぁ、あの返事正解やったんやろか……。
「天音、朝から顔コロコロ変わって、どないしたん?」
「うぅ…凌ちゃん…信介が私のことどう思ってるんか気になりすぎて…全然寝れへんかったんよ〜!」
隣を歩いてる凌ちゃんの手をギュッて掴んで、ブンブン縦に振る。
今朝も、私の話題は信介のことばっかり。
凌ちゃんは「またか〜…」ってちょっと呆れた顔して、私の頭をぽんぽんって撫でてくれた。
「せや、天音...。昨日の朝イチで松田くんフッたらしいやん。あいつ私の隣の席やねんけど、めっちゃ落ち込んでたで。」
サラッと話題変える凌ちゃん。
せやけど、まぁ、いつものことやし別に気にならへん。
「え?あ〜…サッカー部のエースくんやろ。そんなん言われてもなぁ、私には心に決めた人おるし…」
「はぁ〜…ほんまになんで“北信介”なん?ウチの学校、イケメンいっぱいおるのに。もったいないわ〜。」
凌ちゃんの言う通りかもしれへん。
稲荷崎って、確かに顔面偏差値高い思う。
なんでか私は皆から『女神様』とか呼ばれとるけど、女の子で私より可愛い子いっぱいおるんよ。
そん中で、最近やたらモテ期来てるんか、有難いことに毎日ラブレターもろてて…
それに対してちゃんとお返事書いてるし、お昼休みも呼び出されたら会いには行ってる。
それが私を好きになってくれた人への礼儀やと思ってるしな。
せやけど……
嬉しいかって言われたら、正直ちゃうねん。
私が欲しいのは、“あの人”からの「好き」って気持ちだけやから。
「ほら、そんな暗い顔せんと!可愛い顔が台無しやで〜」
「うぅ……だって凌ちゃんがぁ〜…」
「だって天音、なんで好きなんか教えてくれへんやん。もうええかげん教えてーや、私ら幼馴染やろ?」
「そっ…そういうの恥ずかしいねん!いつか言う!いつかは絶対話すからっ!」
あぁ、今日もきっと下駄箱にラブレター入ってるやろなぁ。
知らん子かもやし、見たことある子かもしれへん。
英語の授業、自習やったはずやし、その時間にお返事書こ。
勇気出して伝えてくれた気持ちには、ちゃんと感謝せんとな。
初めての夢主Side。
女神様っておっとり系のイメージだけど、
本作品の女神様は元気なイメージで書いていきます。