第173話「忍び寄る不穏」

――奴良組系狒々組本部――

「ガグゥウゥウ!!」
ザバザバズバン!!
ビュオオオオ!!

風と共に血が飛び散り、狒々の巨体が宙を舞う。

「う……う……ワ……ワシを誰だと思うとる……大妖怪……狒々様じゃぞ……」
「……」
「天下の奴良組幹部の一人じゃぞーー!!」
「ザコはザコじゃ」
ガガガ!!ザザザザンッ!! 
「ウギャアアアァア!!」

******

同時刻

――藤原家彩乃の部屋――

ポウ 
「……ん?」
「どうした彩乃?」
「……友人帳が……光ってる?」
「ぬおっ!本当だ!」

部屋で宿題をやっていた彩乃だったが、机に置いておいた友人帳が突然光り出し、ニャンコ先生と彩乃は驚いて目を見開く。

「……友人帳のこんな反応初めて……」
「!、まさか……彩乃、友人帳のページを捲ってみろ!」
「え?う、うん。」

ニャンコ先生に促され、彩乃は慌てて友人帳のページを捲った。
すると一枚だけ光を放っている紙があったのだ。

「……狒々?」
「何!?狒々だと!?」
「知ってるの?」
ボウッ!
「あっ!」

彩乃がその一枚だけ異様な光を放っている紙に綴られていた名を読み上げると、ニャンコ先生が反応した。
彩乃は不思議に思って尋ねながら光を放つその紙に触れようと手を伸ばした。
しかし、それは突然炎を放ち、一瞬で紙は燃え広がり後には何も残らずに消えてしまった。

「え……な、何で!?燃えちゃったよ!?」
「……狒々の奴が死んだか……」
「えっ!?どういうこと!?」
「そのままの意味だ。友人帳に名を綴られていた妖が死んだから、友人帳から名が消えたのだ。」
「……どうして……」
「私が知るか。だが……狒々と言えば奴良組幹部の一人で、古株の妖だったな。」
「奴良組って……リクオくん達に何かあったってこと!?」
「だから私が知るわけなかろう!」
「……行かなきゃ……リクオくん家に行かなきゃ!」
「はっ!?おい、待て彩乃!」
「ほら行くよニャンコ先生!!」
「ぐえっ!首輪を引っ張るな!首が締まる!!」
「急がなきゃ!」
「話をきけー!!」

彩乃は鞄に友人帳やらスマホやら適当に必要な物を突っ込むと、大慌てで部屋を飛び出したのであった。

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