第226話「リクオ、意識する」

リクオは激しく動揺していた。
ドクドクと先程からうるさい心臓の音に加え、顔に集まる熱から自分は絶対赤い顔をしているに違いない。

(こんな顔、彩乃ちゃんには絶対に見られたくない。)

そんな理由から、先程からリクオはずっと彩乃と目を合わせることが出来ずにいた。

「……リクオくん……もしかして具合悪いの?」
「えっ!?や、違うよ!」
「……本当に?なんだか顔も赤いし……風邪?」
「ほ、本当に大丈夫だよ。」
「そう?ならいいけど……」
「………………はあ。」

渋々納得した彩乃はリクオから離れると、リクオはホッとしたように小さく吐息を吐いた。(もちろん彩乃に気付かれないように)
ふと何やら視線を感じて顔を上げれば、巻や鳥居、氷麗までもがニヤニヤとした笑みを浮かべてリクオを見つめていた。

「……何?」
「べっつに〜?」
「奴良ってわかりやすいよね〜」
「え?何?リクオくんがどうかしたの?」
「え?やっぱり具合悪いの?」
「夏目先輩もカナちゃんも鈍いなあ〜……」
「「??」」

巻の言葉に彩乃とカナは不思議そうに首を傾げたのだった。

******

「あっ、夏目さんこっちこっちー!」
「西村くん、北本くん、透ちゃん、田沼くん。みんなおまたせ。」
「大丈夫だよ。」
「そいつ等が夏目さんの部活の後輩?」
「うん。紹介するね。」

お祭りの会場である神社にやってくると、そこには多軌たちが待っていた。
同じ部活である多軌と田沼は兎も角、北本と西村は今日が清十字団と初対面なので、彩乃は一人ずつ紹介していく。
無事に全員の自己紹介が終わると、全員で屋台を見て回ることになった。

「――さて、何処から回る?流石にこの大人数じゃあ全員が見たいところ回ってたら大変だしな……」
「それなら各々見て回りたい所を一つ決めて、同じ所や近い場所のグループに別れて回るのはどうかしら?」
「ああ、それなら全員が行きたい所を回れるかな?」
「そうですね。それじゃあ一時間後に鳥居の前で待ち合わせにしませんか?」
「ああ、そうするか。じゃあグループは……」

結局全員で回ると効率が悪いということで、いくつかのグループに別れて回ることになった。
巻や鳥居、西村と北本と田沼は射的や金魚すくいなんかの遊戯系の屋台を回りたいというのでまず一組。
清継は神社に出没する妖怪を探索したいということで嫌がる島を連れていくことに。
そして彩乃はニャンコ先生の達ての希望で食べ物の屋台を中心に回ることになっていたので、多軌やカナ、リクオと氷麗も付き合って3グループに別れて回ることになったのだった。

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