第35話「タマちゃん病気になる」

タマちゃん(仮)は、少しずつ少しずつ大きくなって……何故かどんどん衰弱していった。

「……タマ?」
「眠ってるぞ」
「またミルクもハムも残してる……どうしたの?タマ……」

タマがご飯を食べなくなってから二日が経った。
あんなに元気だったのに、ぐったりと寝所で眠っているタマを見て、彩乃は心配そうにタマの体を撫でてやった。

「……何かの病気になったのかな……」
「妖は人間と違って滅多に病にはかからん。だかこいつはまだ雛だしな、ありえなくもない。」
「……っ、奴良くんに相談してみる!」
「おい、彩乃!?」

タマが病気になったかもしれないと思うと、不安で仕方がなかった。
妖怪であるリクオなら病気に詳しい妖怪の知り合いがいるかもしれないと、彩乃はタマをタオルに包んで抱き抱えると、慌てて奴良組に向かうのだった。

「奴良くん!奴良くん居ますか!?」
「……あれ?君は……」

奴良組にやって来ると、玄関先で首無と出会った。
彩乃が尋常でないくらいに慌てているのを不思議に思いながら声をかけると、彩乃は今にも泣きそうな顔で首無に縋りついた。

「首無っ!お願い助けて!!」
「えっ!?ちょっ、どうしたんだ!?」
「奴良くん……奴良くん呼んで!早くしないとタマが!」
「タマ?……あっ!」

必死な様子の彩乃に戸惑っていると、彼女の腕の中でタオルに包まれてぐったりとしている小さな妖怪を見つけた。

「……っ、すぐにリクオ様と鴆様を呼んでくる!とりあえず上がって!」
「う、うん!」

すぐに状況を理解した首無は慌てて人を呼びに屋敷の奥へと駆けていった。

「夏目先輩っ!」
「病人はどこだ!?」

それからすぐにリクオと見知らぬ男性が駆けつけてきた。

「……っ、診せろ!」
「あっ!」

男性はぐったりとしているタマを見つけると、抱っこしていた彩乃からタマを奪い、床に寝かせて診始めた。

「あ、あの……あなたは?」
「彼は鴆。妖怪のお医者さんみたいな人だよ。」
「医者……」

戸惑う彩乃にリクオが説明すると、彼が医者とわかり、彩乃は少しだけ安心してほっと肩の力を抜いた。

(妖にも、お医者さんいたんだ……)
「先輩、あの小さな妖怪が例の辰未の雛ですよね?」
「……うん。二日前から急に何も食べなくなって……何か病気になったのかな……」
「……病気じゃねぇな。」
「本当ですか!」

鴆が彩乃の言葉に答えると、病気じゃないと言われ、彩乃はパッと顔を輝かせた。
しかし、鴆の表情は晴れない。
そして、次の瞬間には彩乃にとって、ショックな言葉を言われることになる。

「この辰未の雛は病気じゃねぇが、逆にもっと厄介なことになってやがる。」
「え……それって、どういうことですか!?」
「こいつは……お前のせいで死にかけてんだよ。」

鴆の口から告げられた衝撃的な言葉に、彩乃は愕然とするのだった。

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