嫌味を言ってくるやつってみんな格下なんだよな


アリスがウォルロ村の守護天使イザヤールの後を継ぎ、次期ウォルロ守護天使になることはあっという間に天使界に伝わった。なんせ、あの不良天使が守護天使になるのだ。どの天使も驚きを隠せてないのが現状だ。アリスだって未だに信じられないのだから。

ただ、リディアだけはアリスの守護天使任命を喜んでいた。リディアとお揃いなのだから、これはこれでよいかとアリスは考えを改めた。


あれから数週間。流石のアリスも真面目にイザヤールの後をついて守護天使の引き継ぎに熱心になる。守護天使は責任重大な役目である。そこを履き違えてはならない。

「あら、アリスじゃない」
天使界へ戻り、イザヤールと別れ一人になったアリスの元へ、いかにも嫌味妬みを好いていそうな女天使数人がやって来る。

彼女が何を言わんとしているかは多方予想がついた。

「おめでとう、優秀な師匠の贔屓で守護天使に任命されたアリス様」
「いやぁ、そう言われると照れるな。辞めろよ、あたし、純粋だから褒められると顔真っ赤になっちまう」
誰がどう聞いても嫌味以外の何者でもない言葉を完全にスルーできるスキルを持ったアリスには、この程度の嫌味などただの雑音にすぎない。

(あ、思い出した)
(こいつら、リディアが守護天使になった時にも嫌味言ってきたやつらだ)

口の悪いアリスと何十年も友達でいたリディアだ。一見温和に見えて、その実こういう類を相手に立ち向かうだけの度胸なり言葉なりはあったため、予想外のリディアの反論に尻尾を巻いて逃げた間抜けな姿を思い出した。

「まぁ、やっぱりさっきの言葉の本意を考える頭もないのかしら?そんなんでよく守護天使になれたわね」
「ほんと、イザヤール様もどうしてこんなやつを守護天使にしたのだか……」
嫌味天使達は更に言葉を続ける。
「第一、あなた下級天使の報告書滞納してるそうじゃない」
彼女の言う通り、下級天使はどんな業務を行って結果がどうなったかを書類に書いて提出する決まりがある。いわゆる活動レポートというものだ。アリスは他の下級天使の半分くらいしか報告書を出していないのもまた事実で。

「いやぁ、ほんとあのハゲもなんであたしを守護天使にしたんだろうな。あたしが知りてぇよ。お前ら何でだと思う?」
「そんなの、イザヤール様の御好意に決まってるじゃない!!」
「いやぁ、あのハゲに限ってそれはねぇだろ。あいつ、事あるごとにゲンコツくらわせてくるし。うーん、やっぱり師匠も守護天使の任務で相当ストレスためてたんだろうな……。それであんな髪に……あ、師匠髪なかった」
「あなた本当に自分のお師匠様を尊敬しているの?!?!」

いつの間にかアリスに会話の主導権を握られている嫌味天使達である。

「これでもあたし、師匠のこと尊敬しているぞ。それに、お前らなんだよ。そんなに守護天使になりたけりゃ、自分の師匠の守護地区で悪戯してもう守護天使は嫌だって思わせときゃいいだろ」
「ま、まさかあなたその手で守護天使の座を……?!」
「いや、ちげーよ。あたしはマジで何もしてねーよ。だから報告書も書く事なくて出していないんだからな」
「……それ、一番駄目でしょ」
嫌味天使の的確なツッコミである。

結局、何を言っても期待した反応をしてくれないアリスに気疲れした嫌味天使は捨て台詞に似たことを吐き捨てて去っていったのであった。

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