減量

最初に言っておく!このSSはかーなーり薔薇のかをりと百合のかをりが漂ってる!!

※ろうふぁさん宅のお子さんをお借りしてます。ろうふぁさん宅のお子さんのキャラがMOVIE大戦COREのオーズパートレベルでキャラに相違があります。
※以上のことを踏まえたうえで、
Open your eyes for the next text!!









減量


俺の名前はヴァン。今をきらめくスーパーイケメン魔法使いだ。イケメンな俺は悩めるマドモアゼル、ティエラの相談に乗ろうと彼女をケーキバイキングに誘い、イケメンな対応で彼女の悩みを聞き出した。……そこ、お前がケーキバイキングに行きたかっただけじゃね、なんて言うな!!とにかくイケメンな俺はマドモアゼルにも紳士的に接しているという訳だ。しかし、ケーキバイキングに行った翌日にアルマからお餅を大量に貰ってしまった俺はノットイケメンなことに体重が1.3kgも増えてしまった。俺は来週、アランと会う約束をしているのにこれは大問題だ!俺はダイエットを決意したのであった。





「はぁ……」
リッカの宿屋でヴァンは本日32回目の溜息をついた。
「そんなに溜息をつかれるとこっちまで気分が悪くなるだろ。いい加減にしてくれ」
ジリアンがまるで「あっちに行け」と言わんばかりに手を振ってみせる。ヴァンの抱える悩みなど、心底どうでもいいのだろう、つまらなそうな表情だ。その動作ですら、ジリアンが行えば様になっているから不思議である。「そーよそーよ!ったく、他の人のことも考えなさいよね」と文句を言うリーベとは大違いだ。

「ヴァン、何か悩みでもある?僕でよければ聞くけど」
アルマがヴァンに問いかけた。
「悩みって言うか、最近太ったから痩せたいんだよ」
我ながら年頃の乙女のような悩みだと思う。しかし、ヴァンにとっては切実な悩みなのだ。なんせ、一週間後にはラヴィエルの力で運命の扉を開き、アランがこちらに来てくれる。アランとは二人でサンマロウへ赴きマドモアゼルたちをナンパしよう、と約束している。普段はパーティ行動をしている為に街でナンパをすればリーベやアルマに止められてしまう。アランと二人、水入らずで安全にナンパをするまたとない機会。太った体でマドモアゼルに声をかけるなんてイケメンがすることではない。

「ヴァン!あんたあたしに喧嘩売ってるんでしょ!」
リーベが椅子から立ち上がり、ヴァンの胸元を掴んだ。
「やべどぉ〜〜!!く、苦しい……!!」
リーベの馬鹿力でそんなことをされてしまうと洒落にならない。というかもう手遅れである。この感覚からすると骨が二三本は折れているだろう。伊達に今年に入ってリーベに胸元を753回掴まれたわけじゃない。
痛いったらありゃしない。

「対して太ってもないくせに花も恥じらう乙女の前でダイエット宣言なんて許さないわよ!」
リーベは仕上げと言わんばかりにヴァンの頬を殴った。親父にも殴られたことのない頬を。これではイケメンが台無しである。

「痩せたい、ねぇ」
ジリアンが呟く。
「そんなの簡単じゃないか。摂取カロリーより消費カロリーが多ければ痩せるよ」
ジリアンの言うことは最もである。これ以上ないくらいに正しい。

「それができたら苦労しねーよ……」

ジリアンには聞こえないようにヴァンはボヤいた。というかジリアンのこの発言こそ、リーベの花も恥じらう乙女の部分を刺激してしまうのではないだろうか。そうなればジリアンがリーベに理不尽な暴力を振るわれる?
それはマズイ。ジリアンを守ってあげなければ。しかし、ヴァンの考えは杞憂に終わった。
「そうよ、それだわジリアン!!」
ヴァンは忘れていた。リーベがこの上なく単純でおめでたい性格なことを。
「ダイエットなんて簡単じゃない!今日から毎日摂取カロリーと消費カロリーを記録するわ!ありがとうジリアン!大好き!」
リーベにとっては余程画期的なものだったのだろう。リーベは嬉しそうにジリアンに抱きついた。そんなリーベの頭をジリアンは撫でる。非常によろしい光景だ。
「ダイエットするのもいいけど、リーベは今のままで十分じゃないか」
「もー!ジリアンったら!」
もはやヴァンとアルマはアウトオブ眼中である。
きっとこの光景を見たら、今は読書に夢中になって部屋から出てこないフィルがジリアンに嫉妬するだろうなぁ、なんて考えるヴァンだったが、本格的にリーベから受けた痛みに耐えられなくなったのでフィルに治してもらうべく、二階へと上がった。


ーーー上がったのだが、いざ部屋に入ってみるとそこには読書に夢中で長らく栄養を摂取しなかったのか、エネルギー不足で動けなくなったフィルがいたので慌ててアルマを呼び、取り敢えずティエラに治療してもらうべく、フィルを抱えてアルマの移動呪文でダーマ神殿へ赴いた。



「あら、アルマさんにヴァンさん。今日はどうされたんですか?……って、フィル!」
「栄養失調をやらかしちゃったみたいで……。あと、ヴァンが打撲と骨折」
フィルを背負って一番健康なアルマがティエラにそれぞれの用事を伝えてくれた。背の低いアルマが長身のフィルを背負うというのはなかなかシュールな光景であるが、ヴァンに男を背負う趣味はない。というか自分もけが人なので他人を背負う余裕がない。

(あー、そう言えば前にアランと会った時におふざけでアランにおんぶしてもらったなー……)
どちらかと言うとフィルの方が重症っぽかったのか、はたまた個人的な理由からなのか、ティエラは先にフィルに処置を行った。テキパキと働くティエラを見つつ、ふと、ヴァンはアランとの思い出を思い出したのであった。

「そう言えば」
ティエラの働きっぷりを見学し、ここに来た時から思っていたことをヴァンは言った。
「ティエラ、今日は随分と珍しい服来てるな」
「ああ、これですか?」
ティエラはいつもロングスカートを履いており、ズボンを履いているところをヴァンは見たことがなかった。ズボンに限らず丈の短いスカートを履いているところも見たことがなかったので、以前、冗談交じりで「膝丈スカートを履いてほしい」と頼んだものの、恥ずかしいと断られたことがある。全てのマドモアゼルは胸と脚を見せるべきだという持論を持つヴァンにとって、ロングスカートなんていうものは言語道断、この世からシャットダウンするべきであると思うのだが、とにかくティエラはロングスカートを愛用していた。
ところがどっこい、これがヴァンやアルマではなく、現在進行形で寝込んでいるフィルの頼みであればティエラも検討するのだろう。リア充なんてクモの呪いにかかって爆発しちまえ、と思うヴァンであった。

「神官様が毎日エクササイズを教授してくださっているんですけど、さっきまで私もエクササイズをしていたので、動きやすい服を……と思ってこれを着たんです」
「神官様のエクササイズ……。なんか胡散臭いっていうか」
アルマの失礼極まりない発言にティエラは「まぁ!」と少し怒ったような声をあげた。
「馬鹿!アルマ!思ってても神官様の元で働く人の前でそんなこと言うな!」
ヴァンとしてもダーマ神官様が教授するエクササイズなんて、とは思っていたがティエラの前でそんな発言は出来ない。
「いい運動になりますし、私はエクササイズを初めて最近増え気味だった体重が落ち着きました」
「へぇ!それは凄いや!ねぇティエラ、それでなんき……」
「アルマー!!もういい!!お前は帰れ!!」
「え……酷いよヴァン……」
ヴァンは恐ろしい発言をしそうになったアルマの言葉をどうにか遮るミッションを成功させた。
アルマは自分の発言の恐ろしさに気付いていないのか、涙目でヴァンを見つめていた。
男にそんな目線を向けられても全然嬉しくない。





ティエラの協力もあり、ヴァンはダーマ神官に弟子入りすることができた。ティエラの言う通り、神官のエクササイズは意外と激しい動きが多く、ヴァンは自分の体重が落ちていくのを実感できた。
さらに、一週間という短い期間で確実に減量する為に、ヴァンは一日一食を貫いた。エクササイズも毎日13回は行った。
当然、エネルギーの均衡が上手くとれずに日に日に倦怠感が強くなっていったが、これもアランと楽しいナンパをするため。そう、アランのため。
アランに会うというのに、1.3kgも太ったなんて、そんなこと、あってはならないのだ。






「……」
「……」
ヴァンがアランに全てを打ち明けた時、アランはしばらく無言を貫いた。面倒臭いやつ、などと思われてしまったのだろうか。どうか、どうか見捨てないでほしい。

無理なダイエットを続けたヴァンはサンマロウの街で倒れたらしい。そしてそのままアランがヴァンを宿屋まで運び、看病したのだと言う。
ベッドの上でお互いに寄り添いながら、長い長い沈黙が流れた。

「ばーか」
やっとアランが口を開いたかと思えば、第一声がこれだ。
「……ごめん」
倒れる前の記憶を辿ってみても、マドモアゼルをナンパした記憶が殆どない。それはつまり、サンマロウに着いてすぐに倒れてしまった、ということで。
ヴァンが謝罪すると、アランは一つ、大きな溜息をついた。

「ヴァンのことだからさ」
アランはヴァンを見ない。かわりに、ヴァンと同じ景色を見ている。アランがヴァンの顔を見ずに、ヴァンの横に座り込んで前を見ているのも、こういう時、ヴァンがアランの顔を見て話すことに気が引けるから、ということを理解してくれているからだろう。アランと一緒に過ごした時間は、確かにアランとパーティを組んで冒険をするアデリーヌらに比べると遥かに短い。それでも、二人で過ごした時間の中、お互いの性格だとか、心地好い関わり方は自ずと理解できた。
だから、アランはヴァンの顔を見ずに話す。

「俺のせいでせっかくのナンパ日和が台無しになった、とか思って責任感じてんだろうけど、俺、そんなんで機嫌悪くなるほど狭い男じゃねーから」
アランは初めてヴァンに向き合い、真剣な表情を見せた。アランの紫色の瞳から、視線を変える術をヴァンは持っていない。

「ちゅーか!!俺、ヴァンが倒れてからめっちゃ心配したんだからな!!マドモアゼルは星の数だけいる!!けど!!ヴァンは……俺のヴァンはどの世界でもお前一人なんだぞ!!」
アランの顔が近い。心臓がバクバクと音を立てている。うるさい。今はアランの声だけを聞いていたいのに。

「ア、アラン……」
アランはズルい。絶妙なタイミングで顔を見せ、こうしてヴァンの魂を、心を掴んで離さない。

「あ、そう言えば今何時だ?」
「もう夕方だぞ」
「夕方?!やばい!タイムセールが始まる!!夕飯の材料を買ってかえんねーとジリアンに怒られる!!」
このままでは心臓がいくらあってももたない。ヴァンは話題を変えてみたが、これから仲間たちに文句を言われる未来しか見えなかった。
「あ、それなら安心しろ。伝書鳩飛ばしてアルマにヴァンは今日帰らないって伝えたから」
「ふぇ??」
あまりにもびっくりし過ぎてヴァンの口からとんでもない単語が出てしまった。
「ばーか、今夜は帰さねーよ」
「アラン……!」
トゥンク。ヴァンの鼓動が高鳴る。
「ちゅーわけで、夜はキャバクラ行くからな!!準備しろよ!!」
キャバクラ。それは、男を喜ばせる技術に長けたマドモアゼルが集う店。マドモアゼルとお酒を飲み、マドモアゼルと会話を楽しめる楽園。そこはこの世と同じ空間とは思えない亜空間。
「マジで?!俺のその魂が目覚めてきたぜ!!」
「今日は俺たちのハニーもいるって言ってたぞ。早く準備しろよ〜」
「何度目だハニー」
アランとヴァンのお気に入りのあの子もいるらしい。これはもう命を燃やしてキャバクラに行くしかない。

けれど、もう少しだけアランの隣にいたくて、ヴァンはそっと、アランに体をあずけた。






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私と魂(ココロ)がリンクしている以下略なろうふぁさんからのクウガタイム番のキリリクです。
え????とっくにごせんふぁいず番超えてる????一体いつのリクエストか????そんなことより小さな星の話をしようぜ!!!!

リクエスト内容がクウガ番にちなんだ"恋人のように寄り添うアラヴァン"だったのですが、ぶっちゃけアラヴァンがちょっとしか出てません。その上頼まれてもないのにゆりゆりしいジリリベ、そしてフィデティエ(こちらは仄めかす程度ですが)要素をぶち込んでます。欲望の塊過ぎるSSですね。本当はアリスも登場させてリーベちゃんと喧嘩っぷるさせたかったのですがただでさえ長ったらしいSSがとんでもない長さになるので、やむを得ずデリートすることにしました。

ちなみにですね、心底どうでもいい情報ですが、一番最初の段落はTRICKのパロディです。episode後半の回の最初に「私の名前は山田奈緒子。超天才マジシャンだ〜」と、前半の粗筋を語るのですが、それのパロディです。あからさまなTRICK布教です(クソ)
ついでに、「何度目だハニー」はTRICKの主人公、山田奈緒子の母親である山田里美の「何度目だナウシカ」のオマージュでもあります。

クウガ番でのリクエストなのに思いっきりキバ要素も入ってますし、肝心の"恋人のように寄り添うアラヴァン"が申し訳程度にしかないっていう最高にクソっぷりを発揮してますが、勿論やり直し請求も可能です!天の道を極めてからやり直そうと思います!
ていうか、肝心のアラヴァンパート、そういう仕様で故意に書いたのですが、恥ずかしいったらありゃしないですね。ちょっとアレな話を書くよりも恥ずかしかったです!!!!

ろうふぁさんのみお持ち帰りあーんど天の道を極めろ請求可能です!!

Honey au Lait