01

王都セントシュタイン。この国の宿を代表すると言っても過言ではない宿の一階は酒場となっていた。酒を飲み語り合う多くは冒険者で、この酒場はそんな冒険者たちが出会いと別れを繰り広げる場であるというのはここの女主人であるルイーダの話。

アランもまた、共に旅をする冒険者を探すため、この酒場にいた。


「で、どんなお仲間が好みかしら?」
「そうだな、まず黒騎士を一緒に対峙に行けるだけの実力を持ったやつ。俺前衛には向かないからさ、戦士系の職を持ったやつがいい。あとおれは回復魔法が使えないから僧侶も欲しいな」
ルイーダに問われ、アランは仲間にしたい冒険者の条件を話す。
アランは自分で武器を持って敵に立ち向かうことを得意としない。まず第一に、アランは重い武器を持てない。
数日前にルイーダを魔物から助けた時もアランは武器を使わず呪文を使って魔物を退治した。魔法の実力は自分でもそれなりにあると自負しているものの、魔法使いは魔力が尽きてしまえばただのお荷物であり、長期戦には向かない。

「あ、あとこれ一番大切なことなんだけど」
アランは一つ、大切な条件を言うことを忘れてたことに気付き、ルイーダに最後の条件を告げた。

「女の子!とびっきり美人でスタイルいい娘を頼むぜ」
アランはルイーダに対してウィンクを投げつけた。ルイーダは慣れているのかアランのことは気にもかけず、名簿に目を通した。

「そうねぇ、あなたの言う条件に当てはまる人物なら三人いるわ」
ルイーダは女性かつ前衛向きの職を持つ人間を紹介していく。
一人目はゴリラのような女性だった。胸のふくらみがなければ男に間違えるような、そんな女性だった。アランは即却下した。
二人目は性格に難があるらしく、詳しく話を聞いてみると血を見るのが大好きな女戦士らしく、下手すればこちらの身も危ないとのことで、自分の体は大切にしたいアランはこちらも却下した。
三人目は戦士をしているくせに持病が酷くて一時間おきに腹痛でトイレに駆け込むようなお方らしく、これでは黒騎士退治どころではないだろうとアランは最後の女性も却下した。

戦士のような職は圧倒的に男性が多く、そもそも絶対的に女性の数が少ないのだ。
諦めて男性で妥協するしかないのだろうか。アランはハーレムパーティーを組むことが夢だった。


「あら、あなたも黒騎士退治に志願する気なの?」
アランが諦めようとした時、まさにこれは神のお導きなのだろう、アラン好みの女性が声をかけてくれた。

綺麗なブラウン色をしたロングヘア、睫毛は長く凛々しい瞳をしているが全体的に女性らしさの現れた面立ちをしており、そして何よりも胸が大きい。完全にアランの好みだった。

「私、フリアイっていうの。黒騎士退治を志願するような強い人を探していたのよ。よかったら私とパーティーを組まない?」
「も、もちろん喜んで!!俺はアラン。あいにく前衛向きの戦士とかじゃないけど、魔法の腕なら保障するぜ。援護は任せてくれ!!」
「フリアイよ。パラディンやってるの。よろしくね」
フリアイがほほ笑む。アランは真っ先に彼女の胸に触れた。うん、柔らかい。

「何するのよ!!」
フリアイがアランを殴る。


胸を触ることしか頭になかったアランは、フリアイの笑みが何か意味ありげな、ただのほほ笑みでないことには気が付かなかった。


酒場にて1
(ヒロインと出会いました)

Honey au Lait