まるで砂糖菓子
 私が今まで経験したこの学院での生活は沢山ある。最初は、皇帝と呼ばれた天祥院英智にTrickstarが解散させられたところで終わった。バラバラになってしまったTrickstarは、DDDに出場することもなく一瞬だけの存在となってしまった。ひとりとなってしまったスバルくんを見て、懸命に尽くしていたあんずちゃんが病んでしまった。そしてそのまま耐えきれず自殺。私は、屋上から飛び降りようとするあんずちゃんを止めようとして、一緒に落ちてしまった。これはもう死んだな、まだ生きていたかったな。なんて思った矢先、目を醒ますと4月に戻っていた。最初は、死後の世界だと思っていたのだけども、それにしてはどうもリアルで本当に過去に戻ったようだった。だって頬つねったら痛かったんだもん。暫く疑っていたのだけど、学校で転校生として同じように紹介されて、やっと理解出来た。これは、戻っている、と。非現実なことだから直感では認めたくもなかったのだけど、夢ノ咲の生徒が登録されていない携帯のアドレス帳や、周りの「転校生」としての扱い、そして死んだはずのあんずちゃんが一緒に転校生としているということ。記憶にある4月の転校初日であった。


「お姉様、これはなんですか!」
「それはね、ねり飴だよ。練って食べるの」
「練るのですね!あぁ、段々白くなってきました!」

 私は今、司くんと駄菓子の研究をしている。同じ学年の創くんに駄菓子屋を教えて貰ったらしく、昨日一緒に駄菓子を買いに行ったらしい。沢山買いすぎて食べきれなかったらしく持ち帰ったは良いものの、家では制限されてしまうため学校に持ってきたという。それと、今日はKnightsのレッスン日だったから私と食べようと思ったらしい。さっき嬉しそうに言ってた。駄菓子の袋を抱えて少し恥ずかしながら誘う司くんは、ストレートに可愛いと言える破壊力を持ち合わせていた。すごく、可愛かった。Knightsのレッスン室で二人机に駄菓子を広げてこれはなんだ、あれはなんだと話しをする。今は嬉しそうに練り飴を練って慎重に形を整えて口に含んでいた。「marvelous!」と言葉を発していたから、お気に召したみたい。ちなみに、Knightsの他のメンバーの皆さんは仕事があったり遅刻だったりまだ来ていない。いつもなら、誰も来てない部屋で次は何をしたら上手く行くかなんて頭を悩ませていた日だったから、司くんがいることに少しだけ驚いた。まあでも、駄菓子の研究してるから頭を悩ませる必要がなくなって嬉しいんだけど。

「あっ、私これ好きだった!」
「mix…餅?お餅ですか?」
「お餅というか、グミに近いかな」

 机の上にあったミックス餅の蓋を開けて、付属している爪楊枝で一つ刺す。そして不思議なものを見るような目をしている司くんに差し出した。

「はい、あーん」
「あ、あーんだなんて!大丈夫です、私自分で食べれます!」

 奪い取るように爪楊枝を取られ、司くんは自らの手で口に入れる。Delicious!と喜ぶ司くんは、少しだけ顔を赤らめて私から目を逸らした。レッスンでよくお話しするから少しは仲良くなれたと思っていたけれど、ちょっと距離感間違えたのかな…。そんなことを思いながら俯きつつ、よかったねと生返事で返すと、私の近くにあったミックス餅を一つ爪楊枝で刺して「お姉様」と声をかけてきた。なんだろう、と顔を上げると少し照れた顔をしながら笑う司くんが私に向けてそれを差し出していた。

「お姉様、あーんしてさしあげます」
「えっ、あ、私に?!」
「はい、あーん」
「いや、ちょっ、っと!待って!」
「嫌ですっ」

 容赦なく私に近づき、それ突き出してくる司くんに流石の私も恥ずかしくなって顔を背けようとする。しかし、有無を言わさない顔で近づけてくるものだから諦めて口を開けた。ころん、と口の中に小さなかけらが入る。

「美味しい!懐かしい味がする」
「良かったです」
「まさか、あーんされるとは思ってなかったけど」
「ふふ、仕返しです」

 司くんは、楽しそうに笑い自分の口にミックス餅を含む。仕返しも何も、私にはさせてくれなかったのに……。と文句が口から出そうになったけれど、嬉しそうに食べる司くんを見てたらどうでもよくなった。でも、まだ瀬名先輩たちと比べて幼い顔であっても、整った顔が近くに来ると心臓に悪いなあ。心拍数が少し上がったままな気がする。顔は、熱い。

「次は何をあけましょう!」

 ミックス餅をあっという間に食べ終えて、次は何を開けようかワクワクしている司くんは目を輝かせてこっちを見てきた。まだ食べるのか、なんて思ってしまったけど流石にそれは言わないでいた。あ、でもそろそろ瀬名先輩が来そうな時間。このことは内密に、何て危険を冒してまでしていることだから早めに何事もなかった状態にしたい。

「んー……でも、そろそろ片付けなきゃ、瀬名先輩とか来ちゃう」
「か〜さ〜く〜ん?なまえ〜?」
「ひぃっ!」

 私たちは、扉の前で笑顔の瀬名先輩を恐る恐る見る。瀬名先輩は笑顔で腕を組みこちらを見ていた。その後ろには、嵐ちゃんが口元を押さえて「あらあら」と眉を少し下げつつ笑っている。ちなみに司くんは、この世の終わりみたいな顔で瀬名先輩を見ていた。

「これはどういうことかな、かさくん〜?」
「あわわわ……」

 この後、私と司くんは瀬名先輩に怒られ、司くんは残った駄菓子を全て瀬名先輩に回収されてしまった。この時見た、涙目の司くんが本当に可哀想だった。ごめん。


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