メンタルゴリラな部下B


「あー!風見さんが愛妻弁当食べてるー!」

まずい奴に見つかった。

風見裕也は自分の手元…正確にはそこにある弁当へと注がれる名字の視線を確認した瞬間、箸のスピードを上げた。

この間、大凡コンマ0.5秒。


『緊急性の高い問題が発生した場合、それを解決するには冷静かつ的確に問題を見極める知識と判断力、そしてその時最善だと思われる行動を如何に迅速にとれるかが重要だ』


これは彼、風見が尊敬する上司の言葉である。

風見自身、日本で選りすぐりのエリートが集まるこの公安警察の1人である。

ましてや上司はその中でも群を抜いて優秀な人物だ。
少々単独での潜入や現場での実戦が多い上司ではあるが(割愛)。

話は上司から変わるが、風見は既婚者である。
職業柄、身内にも自身の職については厳重な守秘義務が適用される為(詳しい事は省くが)公安である事は勿論、妻にも話していない。

そんな通年多忙なサラリーマン(仮)を装いっている自分に、妻はいつも文句を言わず弁当を作ってくれている。
『1人の身体じゃないんだから』と恥ずかしそうに言ってくれた時には『本当に結婚出来て良かった!』と涙ながらに天を仰いだ。

そのように風見が思うのには訳がある。
風見にとって妻は交際時から結婚まで、色々な困難を乗り越えたかけがえのない存在でもあるからだ。

あれは妻と結婚する前、数年の交際を経てプロポーズを考えていた時。
予想では断られることは無いと思ってはいたが何分、これからの人生を共にしてくれと言う一世一代の告白だ。
それとなく職場の既婚者である上司や同僚に経験談を聞いて周るっていると、


『え、プロポーズ?!風見さん結婚するんですか?ていうかその前に彼女さんいたんですね!』


まずい奴に見つかった。


今思えばとあの頃から自分は名字に遭遇する度に、この台詞を唱えている気がしないでもない。

という言うか、俺に彼女がいることがそんなに意外か。そうか。
教育的指導も兼ねて文句の一言でも言ってやろうかと風見が思ったところで、名字は書類の不備を見つけた2徹目の降谷さんに問答無用で連行されて行った。

この時、自業自得だとほくそ笑んでしまったのを神に見咎められたのかーー以降、風見は妻と結婚するまで名字に圧倒的粘着質感をもって絡まれた。


『え、風見さん婚約指輪と結婚指輪の違いが分からない?分かりました!こんな事もあろうかと私がゼク○ィ買っときましたんで音読してあげますね!』

『え、風見さん婚姻届はキャラクター派ですか?おススメは弘兼○史氏デザインです!なんか出世しそうで縁起がとっても良い!』



ーー本当に、結婚するまで波瀾万丈だったなぁ…。



「…オイ、風見さんがまた愛妻弁当名字に横取りされてるぞ」

「あの人、今日で3徹目だろ?名字の奴、毎回風見さんの意識が朦朧としてるところ狙って横取りしてるよな、絶対」



3徹目なのに愛妻弁当がなんでまだあるとか気にしちゃいけない←
2018/1/24
2018/5/3改稿