降谷零の愛車

私のオーナーは暴れん坊だ。

私のことを気に入ってくれているのは嬉しいけれど、扱いが些か…いや、大分酷い。

擦ったとか、凹んだとかのレベルじゃない。

人間なら全身打撲、粉砕骨折ものの重傷。
速攻ICU(集中治療室)送りの入院コースだ。

初めは優しそうな人だなと思ったし、実際に普段は一般の人よりも優しい。

メンテナンスはマメだし、お金に糸目は付けない。
運転も丁寧、交通ルールだって折り目正しくキチンと守る。

運転手あっての存在である私達にとって、そんなオーナーはまさに理想を形にしたような人間だった。


そうー『だった』、過去形である。


あれはそう、もう何度目かも数えるもの億劫になり始めた…入院先(ディーラー)での出来事。

その日は珍しく、入院先に私と色違いの赤いお姉さんがいた。

初めて会った彼女は私が運ばれて来るなり、その悲惨な有様に目をチカチカさせて驚いていた。
治療と言う名の修理が終わりに近付いた頃、世間話も兼ねてお互いのオーナーの事を話していると、不意に彼女が言葉を零した。


『ねぇ…それって、噂の《DV》オーナーなんじゃない?』

『《DV》オーナー?』

『そう。私のオーナーがお友達を乗せてる時に話してるのを聞いたんだけど、パートナーに暴力を振るう事を《DV》って言うんだって』

『で、でも!いつもボコボコにされる訳じゃないんだよ?普段は優しいし、ボコボコになるのもお仕事で熱くなった時だけだし…それにホラ!こうやって必ず綺麗に修理してくれるしっ』

『確かアナタ、出逢ってその日にパートナーになったのよね?』

『え?う、うん』

『車である私達には人間の顔の良し悪しは分からないけど…周りの人間の反応からするに、アンタのオーナーってかなり美形みたいだし』

『そ、そうかな?』

『気に入ったから速攻自分の物にして、でも何かで熱くなったらボコボコにーーでもその後はとっても優しくしてくれて、外見も良く評判も良い人…』


“ はい、ダウト ”


そうブォンブォンと(エンジン音)笑った彼女に、私はパカンと口(ボンネット)を開けてしまった。


ー別に、ショックだった訳じゃない。
寧ろ…今まで言葉にならなかった『何か』が、明確になった気がしたから。


だってそれは逆に言えば、

『気に入って手に入れた筈のものなのに、夢中になると傷付くのも厭わない。ボロボロのボコボコになって、もう動かないんじゃないかと思うくらいに。…でも他に乗り替えることもせず、必ず修理してーー《パートナー》として、一緒に走ってくれている』

って、ことでしょう?


《冥利に尽きる》とは、こういう時に使う言葉なんじゃなかろうか。


そうだと思うと、オーナーの事を…嫌いになれる筈がなかった
まぁ…入退院にはいい加減、辟易しているけれど。



私は車ー『マツダRXー7』。



『人間』であるオーナーとは、決して言葉を交わし合うことは出来ないけれど、それでもいい。

あ、でも。
ボロボロになった私を見て、もしあの赤いお姉さんのように《DV》と言われたり思われたりするのならば、声を大にして『それは違いますっ!!』と言いたい。


だって私がいつも傷付くのは、決まってオーナーが『大切な何か』を守った時なのだから。

決して、オーナーが自分自身を守るために『私』を傷付けた事など…一度たりとも無いのだ。


私の身体の傷はオーナーが『大切な何か』を『守れた証』。


だから、その傷を《DV》だなんてーーよく知りもしないで軽々しく言わないでほしい。


オーナーの手足になって、時には鎧になって守る。
外装の傷は何度傷付いても綺麗に直ってしまうけれど、積み重なり染み着いたオーナーと歩んだ今までは決して消えない。

きっと他のオーナーを持つ同属よりも、私はその体験をより身に染みて実感していると思う。

私の『外』にいる時間の方が長いけれど、それでもせめて私の『中』にいる時くらいは…私がオーナーを守る。


ーこんなこと、まさか愛車が思ってるなんてオーナーは夢にも思わないだろうけれど。


いつも傷だらけになって何かを守っている貴方を、私も守りたいと思っているのは本当だから。



「……だからって、コレはー」



真っ白な肌と、頬に触れる黒い髪。
鏡のように磨き上げられたフロントガラスーその中で此方を食い入るように見つめる、オレンジ色の瞳。

そんな配色の…オーナーに似た容姿の女の子が、鏡の中にいた。


「…どうしよう」



私、『人間』になっちゃった。




続かないw



読まなくてもいい設定&ネタ↓



七海 イオ(外見年齢16歳)

名前の由来はナンバープレート『73ー10』(ななみ いお)から。

安室透(降谷)の愛車『マツダRXー7』が擬人化(顕現)した姿。
黒髪に白い肌、オレンジ色の瞳で外見は安室さんを女子高生にしたような姿。

基本セーラー服装備。
元が車(スポーツカー)のため瞬足。
オーナーである安室さんに似て、慎重冷静に見えて即日行動派。

人間として顕現しているが付喪神的な存在なので、車体もそのまま存在している(刀剣◯舞w)。
ただし、本体(車)が傷付くとそれに連動して人の身体も傷付く。
全損・大破レベルの損傷の場合、傷ではなく失神・昏睡、記憶が一部消える。

オーナーである安室(降谷)さんが大好き。
時折乗せる金髪のお姉さんの香水が好きじゃなくて実は嫌だったりする。
いつも行くディーラーの整備士さんに入院する度、泣かれるので困っている。

コナン君には付安室さんとの関係性を疑われたり、風見さんには世話を焼かれたり、少年探偵団とワチャワチャ&女子高生組とはキャッキャして仲良くしてくれると良い。

何かの事件の際、安室さんの代わりにマツダRXー7(自分自身)に乗って颯爽と現れて欲しい 。
ドライブテクニックが安室さん(オーナー)と激似だと尚良し←願望

過去にあった『アンタのオーナー《DV》じゃないの?事件』で安室さんと同じく『赤色』が嫌い(というか苦手)。

他のキャラの愛車達も何かの折に顕現して、共演して欲しい←願望(2回目)


…ってな感じのDCキャラの愛車擬人化小説が読みたいです、私が。


2018/4/18
2018/5/3改稿