◇ 登校


気持ちの良い朝、大きく伸びをしながら通学路を歩く。
キラキラの陽を浴びて、鳥の囀りをBGMに。

今日は転校生が来るらしい。詳細は不明。
私の席は窓際の一番後ろ。
なんと目の前の席が空席になっているということは、その転校生は私の前の席になる可能性が非常に高い。
可愛い女の子がいいなぁ。
仲良くなって、一緒にお弁当食べたりしたいなぁ。

そんな期待に胸を躍らせながら正門をくぐる。
私はまっすぐ昇降口に行きたい気持ちを抑え、桜の木を目指す。
何故って、それは…

「毎日毎日よく飽きないねぇ、太宰。」

桜の木の下で"首吊り健康法"なる、死にたいんだか健康になりたいんだか解らない自殺を試みている男に話し掛ける。
首に括られている紐を解くと、男は瞼を上げる。

「やぁなまえ、おはよう。私は毎朝こうして首吊り健康法をしながら、君の迎えを待っているのだよ。」

はいはい、と適当に挨拶を返し、解いた紐を回収し鞄に仕舞おうとした。
然しそれを太宰が奪ったかと思うと、私の手を素早く縛り上げる。
異常な程に手慣れているのを怖いと思うが、相手が太宰なので不思議ではなかった。

太宰は鼻歌を唄いながら、上機嫌で桜の木の枝に紐を括り付けた。
地に足は着いているものの、私の両手は強制的に上へ。
手が頭よりも上になった事で、セーラー服の裾も上がり、お腹が若干見えてしまうのを恥ずかしいと思う。太宰曰く、ソレが良いのだと言う。
こんな変態じみた行為も、毎朝の事となれば慣れっこだった。

「うふふ、なまえ良い格好だね。」

そしてここで私を救ってくれる、"愛と正義の人"が登場する。

「あ!太宰さん、またなまえさんを縛り上げて!可哀想ですよ!」

可愛い可愛い武装生徒会の後輩、敦くんである。
小走りで駆け寄ってきて、私の両手を解放してくれる。

「おはよう、敦くん。いつもありがとね。」

弟のように可愛がっている敦くんに、お礼の抱擁をする。
すると敦君の顔が、みるみるうちに真っ赤になる。毎日しているというのに、この子は全く慣れないみたい。
そして太宰が後ろでぎゃーぎゃー騒ぐ。

「敦くんだけ狡い!私にもしておくれよ!」

それを無視して敦くんと二人で桜の木を離れる。

これが毎朝の私のルーティーン。


2018.10.01*ruka



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*confeito*