◆ HR[朝]


時間ぴったりに担任の先生が教室に現れる。
後ろには転校生と思われる人物が居るようだ。
背が小さく、完全に先生の影に隠れて顔が見えない。
然し肩に触れるくらいの茶色い髪が揺れているのは見えた。
やった!女の子だ!
表情が明るくなる。

「起立、礼。」

学級委員の号令で挨拶をする。
顔を上げて転校生に視線を向ける。

あれ。

そこには小柄な、不良っぽい男子学生が立っていた。
なんで転校初日から不機嫌そうなんだ。
両手をポケットに突っ込んでいて、態度も悪い。
あまり関わらないようにしよう。
唯でさえ太宰という、面倒くさい奴のお目付け役をやらされているのに。
これ以上面倒事に巻き込まれるのは御免だ。
私は一気に暗い気持ちになった。
仲良くお昼を一緒に食べる計画は、音を立てて崩れていった。

先生が転校生に自己紹介を促す。
とりあえず名前は覚えた方がいいな。
視線を上げて耳を傾けた。

「中原中也だ。」

「変な名前。」

「あ?」

地雷を踏んだ。


2018.10.01*ruka



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*confeito*