◇ case1 シャツに素肌とネクタイも
「あっちぃ〜」
いつもの平穏な昼下がり、中也くんが団扇で扇ぎながらネクタイに指を掛ける。
元々きっちり締められていないネクタイが更にだらしなく下がった。
シャツの隙間から覗く、健康的な肌から目が離せなくなった。
「ンだよ、なまえ。」
私の視線に気付いた中也くんにジロリと睨まれてしまう。
別にガンを飛ばしていた訳ではないのだけれど、と苦笑いを返す。
「いや、なんか、ちょっと、なんて言うか…見惚れちゃって。」
正直に答えると、拍子抜けした顔を向けられる。
扇ぐ手も止まって、どうやら随分と驚いている様子だ。
「ば、ばばば、ばっかじゃねぇの!男に見惚れるなんざ…」
中也くんの顔は真っ赤に染まり、異常なまでに忙しなく扇がれる団扇。
面白い。
太宰がちょっかいを出す気持ちが、今ならすごく解る。
「ね、もう一回やってみせて。」
だらしなく揺れるネクタイをそっと上へ押し上げ、リプレイを要求してみた。
中也くんは怒った表情で全力で照れを隠している。
それがバレバレだから憎めないのだ。
笑いながら謝り離れると、再びキッと睨まれる。
なんだろうと見ていると、不自然極まりない勢いでネクタイに指を掛け、がっつり下へ下げる。
先より露出は断然高くなった。どうだ!と言わんばかりの中也くんが私を見た。
「あ、うん、ごめん。なんか違う。」
「上等だ、喧嘩なら買うぜ。」
2019.11.29*ruka
◆ 続
<<back
*confeito*