◆ お久し振りです


「なまえさん。」

武装生徒会もなく、帰宅部のなまえが直帰するべく正門を出た直後、名前を呼ばれた。声がした方へ顔を向けると、意外な人物がそこに居た。

「えと…フョードル、さん?」

名前を呼び返すと、にこりと微笑みなまえに近寄る。
フョードルとなまえが顔合わすのは、太宰の入院時以来二度目だ。
太宰が彼ら林檎自殺倶楽部とは仲良くしないでほしいと言っていたのを思い出し、なまえはなんとなく身構える。
とはいえ、名指しで話し掛けられては、無視する訳にもいかず応じた。

「太宰なら、未だ中ですよ。」

帰り際、中原にちょっかいを出していた太宰を思い出しながら伝えた。帰るのにここを通るのはまだ先になりそうだと加える。

「いえ、今日は太宰くんではなく、なまえさんに用があって来ました。」

「え、私に?」

微笑むフョードルを怪訝な表情で見つめるなまえだったが、その真意は読み取れなかった。

「ご存知の通り、太宰くんを我が林檎自殺倶楽部へ勧誘したいのですが、なかなか首を縦には振ってくれません。
そこで考えたのが、なまえさんに入部していただけたら、太宰くんもその気になってくれるのでは、と。
形だけの入部でも構いません。勿論、活動もしていただけたら、私としては大変喜ばしいですが。」

一体どんな活動をしているのだろうか、と疑問も浮かんだが、なまえは首を横に振る。

「つまりは、私を餌に太宰を釣ろうということですか…目の付け所はいいと思いますが、肝心の餌が悪いですね。
太宰を釣りたいのなら、自殺嗜好の美人を探した方が、余程成功率が上がると思いますよ。」

言い終わるとなまえは一礼をして、その場を去ろうと背を向けた。


2020.02.23*ruka



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*confeito*