◇ 見つかるといいですね


「成る程、参考にさせてもらいます。ところで…」

まだ何かあるのかと振り返るなまえが目にしたのは、なまえの鞄を指さすフョードルの姿だった。

「先日お会いした時に付けていた魚のキーホルダー、外されてしまったのですか?
キラキラして綺麗でしたのに。」

「え…ッ!?」

一瞬動きが止まったなまえだったが、直様肩に掛けていた鞄を確認する。
フョードルの言うように、そこにある筈のものがなかった。なまえの顔が一気に青褪める。

「うそ、なんで…今朝までちゃんと、ここに…」

「落とされてしまったようなら、探すのをお手伝いしましょうか?」

「い、いえ、自分で探します…」

なまえは一度もフョードルの顔を見ることなく、慌てて校舎へと戻っていった。



なまえは真っ先に自分の教室へと戻る。
自席の周辺、机の中、ロッカーの中を隈なく探したが、見つからない。
幸い、クラスメイトは全員帰宅したようで、誰も居なかった。
教室内を隅々まで探す、それでも見つからなかった。

諦められないなまえは、その日自分が移動した先を探して回った。
よりによって今日は移動教室が多く、音楽室に美術室、理科室へ順々に巡る。
探し始めてから随分と時間は経ち、陽は完全に落ちていた。


2020.02.24*ruka



<<back


*confeito*