◆ 各々の想いを胸に 〜練習中〜


もうすぐ年に一度の大運動会。殆どの生徒がこの日を楽しみにしており、全力を注ぎ合う催し。
運動はそんなに得意の方ではないけれど、私も例に漏れずわくわくしている。

大運動会では学年の垣根を越えて、紅白に分かれての対抗戦である。
私のクラスは白組で、芥川くんとは組違いになってしまったものの、敦くんと同じだった。
芥川くんは太宰と同じ組と知って、相当やる気になっていたけれど、無茶をしないか心配。
中也くんは中也くんで、同じ種目に出るかどうかも不明なのに”太宰をぶっ潰す!”と息巻いていた。そのずば抜けた身体能力を存分に発揮しての活躍を期待してはいるけれど。

然し、一番の不安要素は太宰だ。
先ずサボらないか。
競技に関してもそうだが、担当している係仕事への影響を懸念している。
私の担当は救護係だが、国木田先生に頼まれ、監視も含めて太宰の担当する放送係を兼任することになった。
どうせ結局は私がやることになるだろうと準備してきたから、最悪太宰の身柄を拘束できずとも構わないが。

軽く溜め息を吐いて廊下を歩いていると、前方に見知った後ろ姿を発見する。ジャージを腰に巻いた敦くんだった。向かい側に見えるのは芥川くんだろうか。
二人ともジャージ姿という事は、大運動会の練習をしていたのかな。声を掛けようと近付くと、それより早く芥川くんは離れていってしまった。

「あーつーしーくんッ!」

背中をポンと叩きながら話し掛けると、敦くんは驚きながら振り向いた。

「なまえさん!吃驚したぁ、誰かと思いました!」

「あはは、ごめんね。芥川くんと何話してたの?」

遠離っていく芥川くんの背中を指差しながら問うと、敦くんは暗い表情で答えた。

「白い鉢巻を血で染めてやるって…」

「え、なにそれ、怖い。」

反射的に体を少し引く。聞かなければよかった。


2020.09.22*ruka



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*confeito*