◇ 救護係のお仕事


大運動会当日、私は先ず救護天幕へと向かった。救護係の仕事の為だ。
怪我人が出ない事が一番、なるべく人が来ませんように、と祈りながら待機していた。

「すみませーん。」

すると程なくして声が掛かる。視線を向けると男子生徒二名が立っていた。見たところ、目立った外傷はなさそうだ。

「怪我ですか?体調不良ですか?」

椅子から立ち上がり問うと、男子生徒は顔を見合わせしどろもどろに怪我ですと答えた。不思議に思ったが、丸椅子へ着座を促す。

「どこを怪我されたんですか?」

目線を合わせるように少し屈み患部を訊ねると、男子生徒は頬を掻きまたも言い淀む。首を傾げると、慌てて膝を指差した。

「ここ、ここです!ここが痛い、ような、気がします!」

指差す先を見てみるが、矢張り外傷らしいものは見当たらなかった。失礼します、としゃがみ込み、ジャージを更に捲り上げてみたが、矢張り異常は見られなかった。
若しかしたら骨や筋肉関連の怪我かもしれないと、慌てて簡易寝台を整える。

「ごめんなさい、今先生を呼んでくるので寝台で安静にしていて下さい。救急車を呼ぶかの判断は先生に」

「きゅ、救急車!?いや、俺は別にみょうじ先輩と話がしたかっただけで…」

突然慌てた様子の男子生徒の顔に視線を向けると真っ赤になっていた。そして更に、その後ろに笑顔の人が目に入る。
付き添いで来た男子生徒は小さくなって震えていた。その笑顔から滲み出る殺気に中てられたのだろう。
私はその笑顔の人、太宰に視線を移した。


2020.09.24*ruka



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*confeito*