◇ 語らう足取り


中也くんのご厚意に甘えて、私は人捜しをしながら校庭を歩いていた。
すると然程時間がかからずにその人を見つけられた。太宰と何やら話している様だった。
邪魔しては悪いと思い、少し離れた所で立ち止まったが、目敏い太宰に見つかってしまう。

「おや、なまえ。片付け終わったのなら帰ろう。」

見つかっては仕様がない、手を振りながら近付いた。

「片付けは終わったけれど、私は敦くんに用があるの。」

太宰の向かいに立つ敦くんに視線を向けて微笑んだ。

「え、僕にですか?」

自分を指差し慌てる敦くんに、ポケットから絆創膏を取り出し手渡す。

「継走お疲れ様。恰好良かったよ!」

転倒した際に膝を軽く擦りむいていて、薄らと血が滲んでいたのだ。敦くんは絆創膏を受け取ると、優しく微笑む。

「有難うございます!なまえさんの声援のおかげです。あの時、なまえさんと芥川の声が、僕を立ち上がらせてくれたんです。」

少しでも敦くんに声が届いていたのならよかった。力になれた事が嬉しくて、二人で笑い合っていると太宰が割って入ってきた。

「ちょっと!私の存在を無視してイイ雰囲気になるのやめてくれる。」

じろりと私を見て、突然頬を抓られる。

「いひゃい!」

「なまえ、私が言った事、全ッ然理解していないようだねえ。それとも何か、君は鶏か。三歩歩くと忘れてしまう程の大きさしか脳みそを持ち合わせていないのかい。さっきまでだって、片付けしながら中也なんかとイチャイチャしちゃってさ。一体、誰に見せつけてるんだか!」

ぐちぐちと文句を言われ続けるが、片付けている所を見ていたのなら手伝うべきだし、別に中也くんとイチャイチャなんてしてないし!
それに誰が放送係の代役をやったと思っているんだこの男は。そう思うと沸々と怒りが湧いてきた。

「だじゃいのばぁーか!」

口喧嘩では勝ち目がないのは解っていたので、シンプルに悪口を吐き出す。
頬を抓られているので、ハッキリとは言えなかったが太宰に伝わるには充分だった。

「は?莫迦は君だろう、なまえ。」

「あうッ!」

太宰の怒りを倍増させただけだった。反対側の頬も抓られる始末。私は悪くないのに…あ、涙が出てきた。

「ぷ、あははは…ごめ、ごめんなさい!笑っては駄目なのに、お二人の遣り取りが面白くて…つい」

敦くんがお腹を抱えて笑い出す。太宰と二人して敦くんを見た後、顔を見合わせる。
何故か笑えてきて、三人で笑った。

それから大運動会の話をしながら三人で家路を歩いた。
歩く速度がいつもよりゆっくりなのは、屹度、大運動会で体が疲れていた所為だけではないと思う。


2021.01.17*ruka



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*confeito*