◆ 各々の想い出を胸に 〜片付け〜


大運動会は白熱の末、白組の勝利で幕を閉じた。片付けをしながら一日を振り返る。

「太宰の野郎、逃げ回ってばっかで真面に勝負しようともしねぇ…終わったら待ってろっつったのに何処行きやがった!」

隣で悔しそうにしている中也くんも、一日を振り返っていた。主に太宰関連を。
苦笑いをしつつ、突っ込むのも面倒なので無視して周りを見渡す。

「ンだよ、誰か捜してンのか?」

無視したのが気にくわなかったのか、でこぴんを喰らう。

「あいたッ…うー、ちょっとね。」

額を摩ってから、ポケットに忍ばせた絆創膏にそっと触れ、片付けを進めた。



盛大に行われた大運動会も、皆で片付ければあっという間にいつもの校庭へと戻っていった。
後はこのボールの入った鉄籠を倉庫に運ぶだけだ。

「後は俺がやっとくから、行けよ。誰を捜してンだか知らねえけど。」

中也くんがぶっきら棒に言う。

「でもこれ重いし、一緒に」

「これくらい、どうってことねえよ。」

そう言うと中也くんは、ほら、と鉄籠を軽々と持ち上げて見せた。
確かに、この重い鉄籠を持ち上げられるなんてすごい腕力だとは思う。これなら問題ないだろう。
でも一つ、教えてあげなければならない。

「それ、キャスター付きだから転がしていけるよ。」

中也くんにとって必要かどうかは微妙だが、情報として伝えた。
誰もが中也くんの様に馬鹿力ではないのだから、少し考えれば解りそうなものだが、中也くんは偶に冷静さに欠けるところがある。
それを聞いた中也くんはそっと鉄籠を下ろし、ゆっくりと押しながら倉庫へ向かっていった。
その背中に、小さく御礼を言った。


2020.12.23*ruka



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*confeito*