◇ 勝負しよう!


中原の転校初日以来、いつも中原となまえは屋上で昼食を共にしていた。
約束をしている訳ではなかったが、なんとなく、肩を並べて食べる。

「中原くん、暑い…暑いよー!」

お弁当を食べ終わり、なまえが空を見上げながら、怠そうに叫ぶ。
中原は牛乳を飲み干し、冷静に答えた。

「暑い暑いって言ってるから暑いんじゃねぇの。」

なまえは持参していた団扇でパタパタと扇ぎながら中原を見る。
なんとも涼しげな顔をしている。
汗をかいていないという訳ではなさそうだが、爽やかさが漂うイケメンに、なまえは自然と舌打ちをした。
すると中原に聞こえてしまったようで、横目でギロリと睨まれる。

「あ!」

然し、なまえは怯むどころか、何かを思いついたらしく、明るい表情を中原へ向けた。

「購買でアイスの販売が始まったって敦くんが言ってた!中原くん、購ってきてよ。」

悪気なく、至極当然かのように依頼するなまえ。

「は?俺は手前のパシリか。ンなもん太宰にでも購ってこさせろ。」

追い払う様な仕草で一蹴する中原。なまえの表情は一変し、心底厭そうな顔をした。

「太宰にお願いなんてしたら、見返りに何を要求されるか…」

正論だった。
太宰なら依頼の何倍もの見返りを要求し兼ねない。中原も察したらしく、なぜか「悪ぃ…」と謝った。
なまえは少し考えた後、再び何かを思いついた様子で、ポンッと両手を合わせた。

「そうだ!勝負しよ!負けた方が勝った方にアイスを購ってくるの。」


2018.10.21*ruka



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*confeito*