◇ バニラソフト


なまえは、所謂ウインクをしたのだ。
中原は顔を真っ赤にして口元を腕で隠した。

「あ!口隠したー!中原くんの反則負けー♪」

途端に明るい笑顔を見せたなまえは"反則負け"という言葉を口にした。

「は?ンなの知らねーよ!」

未だ顔を紅潮させた儘、中原が異議を唱えた。

「笑ったら負けのゲェムで、口元隠したら反則負けに決まってるでしょう。」

なまえは勝ち誇った様に、中原に正論を突きつけた。ぐうの音も出ない中原。肩を脱力させ、俯く。

「仕様がねぇ、俺の負けだ。」

潔く負けを認めた中原は、購買へと向かうべく立ち上がった。背後から「バニラソフトねー」と楽しそうな声が聞こえ、片手を上げて返事とした。

購買へ向かう階段を降りながら、なまえのウインクを思い出す。中原の顔が再び赤くなり、緩んだ口元を手で隠す。
そこでふと、ある事を考えつく。

「彼奴、他の奴にもやってんのか、これ…」

少しモヤモヤした気持ちと、確信犯だろうという所懐を抱く。
女は怖いと思いつつも、悪い気はしない中原だった。


2018.10.23*ruka



<<back


*confeito*