◇ 一限目


朝礼の後、先生が中原くんに座るよう指示したのは、矢張り私の前の席だった。
先程の"変な名前"発言が私によるものだと気付いていた中原くんは、着席する前に私の目の前に立ち、自分の椅子を一蹴り。
ガタンッと大きな音を立て、私は瞬時に姿勢を正す。
中原くんは私を見下し、睨みつけながらドスの効いた声で私に問う。

「手前、名前は。」

「……です。」

「あ?声が小せぇ!」

「みょうじです!」

完全に萎縮している私は、震える声でなんとか名乗る。
中原くんはニヤリと嗤った後「みょうじか、よろしく」と言って席に着いた。
今のは文字に起こしたら絶対『四露死苦』てやつだ。
私は視線を泳がせながら、蚊の鳴くような声で返した。

やばい、完全に怒ってる。
殺されそうな勢いだ。

これ以上関わらないように静かに過ごそう。
授業中、中原くんは静かだった。
不良っぽいから、真面目に授業なんて受けないタイプかと思ったけれど。
人を見かけで判断してはいけないなぁ、と少し反省した。


2018.10.02*ruka



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*confeito*