◇ デェトのお誘い


中原くんは目つきも口も悪いし喧嘩っ早いけれど、話してみれば紳士だし、真っ直ぐ筋の通った人だ。
最初こそ距離を置いていたクラスの皆もその事が解ったらしく、男女問わず人気者、というかいじられキャラになった。
ちょっと怖いけど、そこがまた良いと、特に女子人気は、太宰を脅かす勢いだった。
前後の席なのに休み時間は殆ど話せなくなってしまったぐらい。
それを少し寂しいと感じるのは、何故か解らないけれど、唯一、中原くんを独占できるお昼休みが待ち遠しくなっていた。

いつもの屋上で、いつもと同じ位置に座って、いつもと変わらず、他愛もない話をする。
筈、だった。

「え、ごめん。もう一回言って?」

「だから、次の土曜に遊びに行かねぇかって言ってンだよ。」

中原くんがお昼の話題で上げたのは、真逆のデェトのお誘いだった。
正直、そういう対象として見ていなかった為、直ぐには飲み込めなかった。
勿論それは悪い意味ではなく、男友達として接してきたという意味で、他意はない。
太宰のおかげで、イケメン耐性はできていたから平気だけれど、中原くんのことは結構なイケメンだと思っている(身長はアレとして)。
少なくとも、女子が騒ぎ立てるのも納得がいくくらいには。

その中原くんにデェトに誘われたとなれば、嬉しくない訳もなく。
アレコレ思考を巡らせているうちに舞い上がってしまうのは、人の性だと思う。
急激に上昇していく体温。特に顔に熱が集まる。
太宰の心中のお誘いとは訳が違う。


2018.11.01*ruka



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*confeito*