◆ キセキが叶えた願い事


月曜日、私の学生鞄には、新しいピンクのキーホルダーが揺れている。
三人お揃いのキセキの魚のキーホルダーだ。
貰ったイルカとウミヘビちゃんのぬいぐるみは枕元に置いてある。
武装生徒会の皆へのお土産は放課後に渡そう。お土産を渡す前って、なんだかソワソワする。

土曜の楽しかった余韻がまだ残っているのも手伝って、今日はとても気分が良い。
両手で頬杖をつきながら、未だ主が来ない前の席を見る。早く来ないかな、来たら何から話そうかな。
そんなことを考えていたら、自然と口元が弧を描く。

「朝っぱらから何ニヤついてんだよ、気色悪ぃ。」

一限開始、ギリギリ間に合ったその声は、いつも通り慌てることなく堂々としていた。
言葉は悪いが、どうやらこの人も、割と機嫌は良さそうだ。

「おはよう、中原くん。」

挨拶をすると、簡単な返事が返ってきた。
机に置いた中原くんの学生鞄に、色違いのキーホルダーが光った。
付けてくれたんだ…
途端に嬉しくなって、満面の笑みで中原くんを見上げた。

「なんだよ、変なモンでも喰ったか。」

棘のある物言いは照れ隠しでしょ。耳まで真っ赤にしていたら、バレバレですよ。

「ありがとう。」

小さな声で言ってみた。中原くんの耳には届いたみたいで、ニヤリとした表情を返される。
イケメンのそれは卑怯だと思う。私まで赤くなってしまう。二人して熱を持ったまま、一限が始まった。


2019.01.19*ruka



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*confeito*